強くなれ 1


「ナドレは大破。・・・キュリオスは敵2機と交戦中。」

フェルトの泣き声が響く。


私は、祈ることしか出来なかった。

・・・アレルヤ・・・
・・・刹那、ティエリア、ラッセ・・・

・・・戻って・・来るよね・・・?





あの大戦から、1ヶ月・・・

・・・結局、ティエリアとラッセ以外、帰って来ることは無かった・・・

私は、ラグランジュにあるソレスタルビーイングの基地から、地球に降りて、
アレルヤを捜す決心をした。


「・・・それじゃ・・イアンさん、ティエリア、フェルト、ラッセ・・・元気でね。
 皆さんも・・お世話になりました。」
私は、イアンさん達や、他のクルーにお礼を言い、深ぶかと頭を下げた。

「本当に行くのか、。」
ティエリアが、少しだけ心配そうな顔をした。

「うん。アレルヤを・・・捜したいから・・・」

「・・・そうか。」

、気をつけて行けよ。」
イアンさんが、私の肩をぽんと叩いた。

「イアンさん・・・今まで、本当にありがとうございました。
 私、絶対、戻って来ます。
 アレルヤを捜して、絶対、ここに戻って来ますから・・・」

「おう。いつでも連絡して来い。」

「はい。」


そして・・・私は、地球へと降り立った。
アレルヤを、捜すために。


絶対、アレルヤは死んでない。
絶対、生きてる。


そう自分に強く言い聞かせて、溢れそうになる涙を抑え、
俯きそうな顔を無理に上げ、私は力強く一歩を踏み出した。



私が向かった先は、人革連の軍。
一般兵に応募したのだ。

恐らく、アレルヤ、そしてキュリオスが鹵獲されたのは、人革連の筈。
今までの歴戦から、そう考えるのが妥当だ。
超兵機関のあった人革連。
同じ超兵出身の兵がいる人革連。

日本人の私が、アジア圏の人革連に入るのは、至極当然のことなので、
きっと誰も不思議には思わないだろう。


もう、後戻りは出来ない。
過酷なテストを経て、私はようやく、軍隊に入ることが出来た。

『ミッション1、コンプリート』
アレルヤの声が聞こえたような気がした。

そう、ここからが始まり・・・
絶対、アレルヤを見つける・・・



軍隊の生活・訓練はとても厳しい。
今まで、体を必要以上に動かしていなかった私にとって、
訓練はとてもついていけるものではなかった。

「おい、!!遅れてるぞ!!」

「はい!すみません!!」


でも、アレルヤに少しでも繋がれば・・・

そして、今まで、護って貰ってばかりいた私が、
今度は、アレルヤを護れるように・・・
強く。強くなりたい。

ただその想いで、軍の生活を一日、一日と乗り切っていった・・・




「君が、かね?」

休憩時間、休憩室でお茶を飲んでいると、声を掛けて来た男性が居た。
スミルノフ中佐だ。後ろには、ピーリス少尉も居る。

私は、内心とても焦った。
確か、キュリオスを執拗に狙っていたのは、この二人・・・
そして、ピーリス少尉は、アレルヤと同じく、超兵機関の出身・・・

でも、その動揺を顔には出さずに、
「はい、です。スミルノフ中佐、ピーリス少尉。」
ソファから立ち上がり、敬礼をした。

「少し話がしたい。いいかね?」


!!
もしかして・・身元がバレた?!!


私は怯えつつも、
「はい」
と、二人と向き合ってソファに座った。

「あ、あの、お茶、お持ちしましょうか?」
私は、あまりの緊張に耐え切れず、そう切り出した。

「いや、君は座っていたまえ。
 あ、そこの君。お茶を2つ。」
中佐が、近くを通りかかった兵に声を掛けた。


・・・逃げられない。
でも、この二人と近付くいい機会だ・・・

私は、覚悟を決めて、スミルノフ中佐の次の言葉を待った。


中佐は、お茶を受け取ると、一口飲んでから、
。君は、何故、軍に入ったのかね?」
と、尋ねてきた。

「え・・?」

思いもよらなかった言葉に、少し間の抜けた声を出してしまった。

「君のような、まだ若い少女が・・・
 ピーリス少尉よりもまだ年下だと聞いたが。
 そんな君が、何故、軍など・・・」

スミルノフ中佐が、ピーリス少尉をちらりと見やり、そして、私へ視線を戻した。

「わ・・私は・・・」

力をこめて握った拳が震え、声までも震えてくる。

「私は、強くなりたいんです。」

少し俯いていた顔を上げ、スミルノフ中佐と視線を合わせた。

「先の大戦の影響で・・・
 ・・・私の、大切な人が・・・」

言葉を詰まらせると、

「・・・亡くなった・・・?」

スミルノフ中佐が、次の言葉を引き継いだ。
その言葉に、かっとなる私。

「死んでません!!!!!」

がたっっと勢いよく立ち上がると、足元のローテーブルにぶつかり、私のお茶がこぼれる。
そして、私の目からも・・・涙が一筋こぼれた。

私の剣幕に、少し唖然とするスミルノフ中佐とピーリス少尉。

「死んでなんか・・いません・・・
 絶対、生きてます・・・
 ただ・・・今は・・・
 行方が分からないだけです・・・」

私は、ゆっくりとソファに座り直した。

「・・・それは失礼した・・・」
スミルノフ中佐は、気まずそうに言った。

「いえ・・私こそ・・・取り乱して申し訳ありません・・・
 ・・・軍に入ったのは・・・
 その恋人と・・・彼と再び逢えた時、
 今度はこんなことにならないように、強くなりたいんです。
 私が、彼を、護りたいんです。
 ・・・だから、軍に入りました。」

「そうか。強い信念を持つことはいいことだ・・・
 だが、君はまだ若い。
 何か困ったことがあったら、いつでも言いなさい。
 私にも、この、ピーリス少尉にも。」

「はっ!ありがとうございます。」
私は、さっと敬礼をした。

そして、スミルノフ中佐とピーリス少尉は立ち去った。


・・・これで、二人に近づくことが出来た・・・
アレルヤの敵だった人だけど・・・
・・・なんだか良い人みたい・・・

ううん。
皆、仲間には優しいだけだ。
今は、まだ自分の身元がバレてないからいいけど、
バレたら・・・
・・・気をつけなければ・・・


私は、より一層気を引き締めた。


おしまい。


☆☆☆

1st⇒2ndの空白期間を自分なりに補完してみました。こんなだったらイイナ、と。

↓宜しければ感想などどうぞ♪


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