強くなれ 2


訓練の後。
自室にこもって、軍施設の見取り図を何枚もパソコンに表示させ、思案していた。
きっと、このどこかに居るはず・・・
でも、一体何処に・・・?

私は、考えがまとまらず、疲れた脳を休めようと、一旦パソコンを閉じた。
そして、ポケットから携帯端末を出し、写真を表示させた。


アレルヤの笑顔。
皆で海に行った時の写真。
アレルヤと初めてデートした時の写真。


ここには、たくさんのアレルヤが居るのに、
この世界の何処に居るのか分からないアレルヤ・・・

その寂しさから、思わず涙がこぼれた。
・・・強くなる、って決めたのに・・・


その時。

ドアの外で、ピーリス少尉の声がした。

「はい!」
慌てて写真を閉じ、ドアを開けた。

「・・・・・・泣いて・・・」


!!!
しまった!!


私は慌てて涙を拭き、敬礼をした。
「失礼しました!何か御用でしょうか、ピーリス少尉!」

「少し、話をしてもいいか?」

「はい」

少尉を中へ入れ、椅子を勧め、私はベッドへ腰掛けた。

少尉は、携帯端末をちらりと見、

「・・・恋人の写真でも見てたのか?」


!!!
や・・やばい・・・
写真を見られたら・・・
ガンダムマイスターの顔を知ってるかも知れないピーリス少尉に見られたら・・・
でも、ここで嘘をつくと、絶対それもバレそうな気がする・・・

私は、覚悟を決め、正直に言うことにした。

「・・・はい・・・
 彼を・・思い出していました・・・」

「そうか。
 ・・・、お前は脆い。
 もっとしっかりしなければ、な。」

ピーリス少尉が、少し表情を柔らかくして、私に忠告してくれた。

「はい。・・そうですよね・・・頑張ります。」

私は、無理に笑った。

「だが・・・大切な人が居る、というのは素晴らしいと思う。
 私も、スミルノフ中佐が居なかったら、と思うと、少し怖い。」

ピーリス少尉のこの言葉に、少しびっくりした。

「・・・ピーリス少尉は、スミルノフ中佐が大切なのですね。」

私達は、ふふっ、と、笑いあった。


。その大切な恋人とやらの写真、私にも見せてくれないか?」

「!!!!」


・・・恐れていたことが来てしまった・・・


私は、少しうろたえ、でもそれを悟られないように努めながら、

「え・・でも・・あの、恥ずかしいです・・・」

「そう言うな。恋人とはどういうものか、見てみたい。」


・・・逃げられない・・・


私は覚悟を決め、

「じゃあ・・・ちょっとだけですよ?」


皆で海に行った時の写真をチョイスした。

水着の私と、私服のアレルヤ。
アレルヤの腕に自分の腕を絡め、
カメラに向かってピースをしながら満面の笑みをこぼしている私。
ただ、隣りのアレルヤの顔は、鼻から下しか写っていない。
それでも、アレルヤの口元から、笑っていることは分かる。


『ちょっと、リヒティ!!なんなのこの写し方!
 アレルヤが切れてるじゃないの〜!』
写してくれたリヒティに対して、不満の声を上げる私。

『だって、俺としては水着の女の子しか写したくないっすよ。』

『君、それセクハラ。』
つっこむクリス。

『まぁまぁ、
 ほら、今度はクリスに撮って貰おうよ。』
そう言って、私に一層顔を近付けて来るアレルヤ。

『はーい、じゃあ撮るよー』
クリスがカメラのシャッターを押す瞬間。

、その水着、とても良く似合ってるよ。可愛い。』
アレルヤが、私の耳元でそっと囁いた。



だから、アレルヤの顔が切れてる写真の次には、
顔を真っ赤にした私の頬に、
アレルヤが自分の頬をぴったりくっつけて写っている写真がある。

少尉に携帯を触らせたら危険だ。
1枚だけ見せて、なんとか乗り切らないと・・・!!!


私は、携帯を自分で持ったまま、例の写真を見せた。

「・・・相手の顔が写ってないのだが・・・」
少し不満そうな少尉。

「は、恥ずかしいんです!
 ・・・もう、いいですよね?」

有無を言わさず、私は携帯をしまった。

なんだか本当に恥ずかしくなり、私は、顔を真っ赤にして、俯いた。

そんな私を見て、少尉は
「恋をすると、そんなふうになるのだな。」
と、可笑しそうに笑った。

「相手の顔、全ては見えなかったが・・・
 も、相手も、笑っていた・・・
 ・・・幸せそうに、笑っていた・・・」

その少尉の言葉に、私は胸が熱く、苦しくなった。

「・・・えぇ・・・
 幸せでした・・・とっても・・・」

「見付かるといいな、恋人・・・」

「・・・はい・・・
 ありがとうございます。
 ・・・ピーリス少尉、なんだかお姉さんみたいです。」

「そうか。では、は妹だな。」

そして、また私達は笑いあった。


どうやら、少尉は、私を受け入れてくれているようだ。


・・・ごめんなさい、ピーリス少尉。
私は、あなたを利用しようとしてる・・・
いっぱい、嘘もついてる・・・

私は、心の中で謝罪した。

だが、私の心をピーリス少尉は知る由も無く、
私と彼女の距離はぐっと縮まり、軍の中で一番信頼のおける人となった。


おしまい。


☆☆☆

少尉と仲良くさせてみました。

↓宜しければ感想などどうぞ♪


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