強くなれ 6
スメラギさんのミッションプランが、イアンさんから届いた。
トレミーごと地球に突入、その後、ガンダム3機で施設に攻撃。
そして、アレルヤのガンダム、アリオスを待機させ、アレルヤはそれに搭乗して逃げる。
アレルヤを解放するのは、刹那。
短時間で行う、ミッション。
どうやら、アロウズの方でも、アレルヤを囮にし、
ソレスタルビーイングをおびき出す作戦だと聞いた。
私は、ミッション開始まで、ピーリス中尉の傍に居た方が都合が良いと思い、
中尉と行動を共にした。
突然、警告音が、施設に響き渡る。
・・・ミッション、スタート!!!
私は、中尉の後ろに付いて歩きながら、スメラギさんのプランを脳内に展開させた。
「E57の捕獲を」
マネキン大佐からの指令に、
「了解」
と、ピーリス中尉が応えた。
やっぱり・・・!!
ピーリス中尉に付いてて正解・・・
アレルヤの収容されている部屋へ向かう途中、
爆撃で、ピーリス中尉や他の人が、壁にうちつけられる。
その爆撃を予期していた私は被害を回避し、中尉達が当分動けないだろうと予想をつけ、
アリオスガンダムが来る筈の指定ポイントへと向かった。
きっと、刹那がアレルヤを開放している頃だろう。
指定ポイントの陰に隠れていると、誰かの走ってくる足音がする。
そっと覗くと・・・
アレルヤだった。
・・・良かった!!!
刹那、ミッションクリアしたんだ!
アレルヤ・・・ほんとうに良かった!!!
涙がうっすらと滲み、大好きなアレルヤの姿をぼやけさせた。
アリオスガンダムのハッチが開き、あとは、アレルヤが乗るのを見届けるだけ・・・
アリオスが出発したら、私も、何食わぬ顔で、この基地から一人で去ればいい。
そう思い、陰から見守っていると・・・
「止まれ!!
そこまでだ、被検体E57!」
・・・!!
やっぱり、来てしまった・・ピーリス中尉・・・
アレルヤの正面から、銃を構えるピーリス中尉。
私は、ゆっくり物陰から出ると、アレルヤの後ろから銃を構えた。
「!」
中尉が私に気付くと、目で合図した。
『挟み撃ちにしろ』
私も、こくんと頷いた。
アレルヤのすぐ後ろまで来ると、私は素早くアレルヤを庇うように前に回り込み、
今度はピーリス中尉へ照準を合わせた。
「?!?!!」
「!!?!!」
ピーリス中尉と、後ろのアレルヤが、驚きの声を上げる。
「・・・ピーリス中尉・・・ごめんなさい・・・」
「どういうことだ、!!!」
「・・・私の、行方不明になっていた恋人・・・
それが、・・この人なんです・・・」
「!!!
・・・被検体E57が・・・?!」
中尉が、目を見開いて驚く。
「そんな言い方、やめて下さい!
彼は・・・実験体なんかじゃありません。
彼は、人間です。私の、大切な人なんです。
アレルヤは・・・私が護る!!」
私は、銃を構えている手に力を込めた。
「ピーリス中尉、お願いです、退いて下さい。
私は・・・中尉を撃ちたくありません。」
「・・・・・」
後ろのアレルヤが、弱弱しく私の名前を呼んだ。
「アレルヤ、早く!!早くガンダムに乗って!!」
「・・でも・・が・・・」
「いいから、早く!!乗って!!!」
ピーリス中尉から少し目を逸らし、アレルヤを一瞬見た。
不安そうな顔をしている。
「大丈夫だから。私も後からすぐ行くから。」
少し躊躇って、でも、決意をしたのか、アレルヤは駆け出し、ガンダムへと乗り込んだ。
ほっとしたのも束の間、横道から出てきたアンドレイ少尉や、中尉のお供達が、
私に向かって発砲してきた。
私も負けじと応戦する。
「やめろ!を撃つな!!」
ピーリス中尉が制止してくれたが、一人の撃った弾が私の肩を貫いた。
「・・くっ・・」
私は、苦痛に耐えながら、牽制の発砲を続けた。
・・・早く!早く、出発して、アレルヤ!!!
そう願いつつ、牽制を続けながら、自分も退路を確保しようとした、その時。
「!!乗って!!!」
コックピットから、少し顔を出して、アレルヤが叫んだ。
「えっ?!」
私は、目だけアレルヤに向け、疑問の声を上げた。
「も一緒に逃げるんだ!!ほら、早く!!!」
・・・スメラギさんのプランには、私は含まれていない。
私は、私一人でここから逃げ延びる、そう考えていた。
・・・でも・・・
・・・アレルヤと、もう、これ以上は離れたくない・・・
それに、一緒に逃げた方が、自分で退路を確保するより、確実かも・・・
そう思った私は、牽制を数発撃ち、一気にアリオスへと走った。
「ピーリス中尉、今までありがとうございました!」
私はそう叫ぶと、コックピットへ飛び込んだ。
それと同時に、アリオスガンダムが発進する。
連邦軍のMSと交戦したが、アレルヤの戦闘能力は衰えておらず、
初めて乗るアリオスだったけれど、器用に操縦し、何機か倒した。
私はその様子を見ていたが、次第に、撃たれた肩からの出血が酷くなり、
だんだんと目がかすんで来る。
闘っているアレルヤに迷惑をかけまいと、
私は静かに座席の横に座り、ゆっくりと意識を手放した。
・・・大丈夫。
アレルヤなら、もう大丈夫。
生きて、トレミーまで戻れる・・・
私は、意識を失いながらも、アレルヤが生きて戻って来たことに、とても安心した。
・・・おかえりなさい、アレルヤ・・・
おしまい。
☆☆☆
アレルヤを護るヒロインちゃんが描きたかったのです。
↓宜しければ感想などどうぞ♪
【戻】