再会
「アリオスの機体を、捕捉出来ません!」
フェルトの言葉に、私は愕然とした。
アロウズとの激戦の中、アリオスが墜落したらしい・・・
・・・アレルヤが!!!
また、アレルヤが居なくなってしまうの・・・?!
そんなの・・・絶対に嫌!!!
私は、スメラギさんのところへ駆け込んだ。
「スメラギさん!お願いです!
アレルヤの捜索活動を行うケルディムに同乗させて下さい!!」
「・・・・・でも・・・」
スメラギさんは、戸惑っていた。
「もし、戦闘になったとしても、勿論邪魔はしません!
覚悟は出来てます!
でも・・・もう、アレルヤを失いたくないんです。
アレルヤと・・・離れたくないんです・・・
・・・お願い・・します・・・」
私は、その場に崩れ落ちた。
『いーんじゃねーの?
心配なんだろ。
俺はかまわねーぜ?』
通信機から、ロックオンの声がした。
「・・・いいわ。気をつけてね、。」
「はい!!ありがとうございます!!」
私は、ケルディムに駆け寄ると、ロックオンに助けられてコックピットへ乗り込んだ。
出発すると、外は雨だった。
「・・・アレルヤ・・・どうか、無事でいて・・・」
私が願いを口にすると、ロックオンが、ふっ、と笑った。
「あんた、よっぽどあいつが心配みたいだな。」
「!!
す、すみません、邪魔してしまって!
黙ってます!!」
私は慌てて謝った。
「いや、いーよ。
あんた、あいつの為に、4年間、慣れない軍隊生活をしてたんだって?
凄ぇじゃねーか。」
「いえ、・・・全然凄くありません。
アレルヤを失うことの方が、もっと怖いから。」
「・・そっか・・・
敵さんに見付かるより早く、あいつを見付けるぜ!」
「はい!お願いします!!」
なんだか、変な気分だった。
ロックオンなのに、ロックオンじゃない・・・
本当に別人なんだな、と思い知らされる。
でも、悪い人じゃないみたいで良かった・・・
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(sideアレルヤ)
気が付くと、知らない場所に不時着していた。
墜落時のショックの影響か、体中に痛みが走る。
僕はハッチを開くと、外を見た。
戦闘は日中だったのに、すっかり夜になっている。
しかも、雨だ。
・・・、心配してるだろうな・・・
また、を不安にさせてしまって・・・何をやってるんだ僕は・・・
自分を叱咤し、システムを確認した。
が、どうやらシステムダウンしているらしく、全く動かない。
・・・救助を待つしかないようだ・・・
外の雨へと目をやり、ヘルメットを取り、地上へ降りた。
ここは・・一体どのへんなんだろう??
ぼんやりと空を仰いでいたら、後ろで機体の動く音がした。
振り向くと、敵機のハッチが開き、突然、敵が飛び降り、
そして、僕に殴りかかって来た。
どうやら女性らしく、僕は応戦する気にならず、
攻撃をかわすのみにしていた。
すると・・・
「・・お前は・・・」
相手の振り上げた拳が、空中で止まった。
「・・・?・・・」
一体、どうしたというのだろう・・・?
相手の女性は、僕に殴りかかるのを止め、ヘルメットを取った。
この女性の顔には、見覚えがある。
が僕を助けに来てくれた時、
『ピーリス中尉』と呼んでいた女性だ。
「・・・が・・・」
俯いているピーリス中尉が、ぼそり、と声を出した。
「が、幸せそうに・・・笑っていた。」
顔を上げ、僕の目を見、
「おまえ達は、幸せそうに、笑っていたんだ・・・写真で・・・」
ピーリス中尉の拳は、もう振り上げられることはなかったが、しかし、
ぎゅっと握り締められていた。
「・・・写真・・・?」
「貴様の顔は切れていた。
だが、幸せそうに笑っていると貴様が・・・」
どうやら、皆で海に行った時の写真らしい。
「それを・・が、あなたに・・・?」
「あぁ、見せて貰った。随分昔のことだがな。
は、いつも泣いていた。
恋人が、行方不明だ、と言って・・・
だが、絶対に見付ける、自分が護る、いつもそう言っていた・・・」
「・・・」
「あいつは、ずっと無理をしていた。見ていたから、分かる。
軍に慣れる為に、必死で。
貴様を捜すのに、必死で。
は、入隊した時、銃も握ったことが無かった奴だ。
それが・・MSを操り、銃も扱えるようになった。
・・・全て、貴様のせいだ。」
「・・・」
僕は、返す言葉も無かった。
確かに、ソレスタルビーイングに居ても、は非戦闘員だった。
だから、銃は勿論、MSも扱っていなかった。
それなのに・・・
が、MSまで・・・
僕は、やり場のない、自分への怒りで、どうにかなりそうだった。
「何とか言ったらどうだ!
被検体・・いや、
ガンダムのパイロット!!」
中尉が、僕の反応が気に入らないらしく、怒鳴った。
「・・・本当に・・・
その通りです。
僕のせいで、は・・・」
「自覚はあるようだな。」
「でも!だからこそ!
僕は、を幸せにしたい!
僕の隣りで、ずっと、が、笑っていられるように!」
「貴様のような奴に、出来るのか、それが?!」
「絶対に、現実にしてみせます!
僕は・・を幸せにしてみせる!!」
「クッ・・貴様は・・・」
中尉が何か言いかけたその時、空が明るく光った。
どうやら、救援らしい。
・・・敵の・・・
身構える僕の隣りで、中尉が声を発した。
「あの機体は・・・大佐?!」
「?」
疑問の目で中尉を見ると、
「私の・・の、上官だった人だ。
大佐も、私以上にを気に掛けてらっしゃった・・・」
と、僕を睨みつけつつも、攻撃してくる気配は無い中尉。
MSから、その大佐がゆっくり降りてきた。
「ピーリス中尉、無事か!
・・貴様は・・!」
大佐が、僕に気付き、銃を構えた。
が、
「お待ち下さい、大佐!」
中尉が僕の前に立ち塞がった。
「中尉?」
「このパイロットは・・・
の、恋人です・・・」
「なに!の!」
大佐が、驚いた目で僕を見つめた。
僕は、何と言っていいか分からず、ただ、
「・・・どうも・・・」
と、不恰好に挨拶することしか出来なかった。
「!
その声は・・5年前の・・・
そうか、貴様が、の、行方不明だった恋人、か・・・」
大佐は、そう呟くと、銃を下ろした。
「・・・は・・元気か?」
「・・・はい。」
「そうか。
貴様に逢えて、あいつも喜んでいただろう。
・・・軍では、は戦死扱いになっている。
ソレスタルビーイングの一員だと軍に知られては、
が困るだろうからな・・・」
僕は、はっとなった。
そこまで考えてくれていたとは・・・
敵とは言え、とても有り難く思った。
「お気遣い、感謝します・・・」
僕は軽く頭を下げた。
「中尉、機体は?」
「はっ、どうやらシステムダウンしているらしく・・・」
「そうか。援軍が必要だな・・・」
そう言うと、大佐は、コックピットへ上って行く。
「中尉、援軍を要請する。
・・が、少し時間がかかりそうだ。
しばらく待機していてくれ。」
言いつつ、僕を見て、にやり、と笑った。
その間に、逃げろ、と言うことか。
「青年。
5年前、低軌道ステーションの人命救助では、世話になったな。」
「・・・いえ。
仲間からは、規律違反だ、と罰せられましたが、
だけは、褒めてくれました。」
「・・・そう言う娘だ、は・・・
大事にしてやれ。」
そう残すと、大佐のMSは空へと消えた。
「の言いそうなことだな。
あいつは、闘うべきではない。」
大佐を見送った後、中尉が口を開いた。
「・・・分かっています。
僕も、を闘わせたくありません。」
「だが、あいつは、貴様を護る為なら何でもやりそうだ。
・・・貴様を生かしておくのも、の為だからな。」
「・・・それも、分かっています・・・」
そう言う僕の目に、朝日が眩しく映った。
そして、その朝日の中で、ケルディムがこちらに向かっているのが見えた。
「貴様の救援か。」
ケルディムが着地すると、コックピットからが飛び出してきた。
「アレルヤ!!!!良かった、無事で!!!!」
涙をこらえながら、必死で笑顔になって、僕に駆け寄る。
「!!どうして・・?!」
僕は、勢い良く飛び込んで来たを抱き止めた。
「アレルヤが心配で・・・
それで、乗せて貰ったの。無理言って。」
えへへ、と照れ臭そうに笑う。
「・・・・・・」
僕は、ぎゅっとを抱き締めた。
僕の感触を充分味わったのか、が僕の胸から顔を上げ、
近くに居る中尉へと目を向けた。
「ピーリス中尉・・・」
は、僕から離れると、ぱっと敬礼した。
あまりにも慣れたような仕草だったので、僕は少し哀しくなった。
「中尉・・・あの・・・
本当に、申し訳ありませんでした。
私・・・中尉や、大佐に対して、嘘を・・・」
「いい。分かっている。
、おまえはこいつを助けたかっただけ、そうだろう?」
「・・・はい・・・」
「おまえが幸せなら、それでいい。」
中尉は、に向かって笑った。
「おい、貴様。」
中尉が、僕に向かって言った。
「ここに、間も無くアロウズの援軍が来る。
早く立ち去れ。」
「!!
中尉、見逃して・・・下さるのですか・・・?!」
「今回だけ、な。
次に会ったら、容赦はしない。いいな。
・・・分かったら、早く行け。」
そう言って、中尉は僕たちに背を向け、MSの方へと歩いて行った。
「中尉!ありがとうございました!!
・・・私、本当に、お姉さんが出来たようで・・・
嬉しかったです・・・
それと・・大佐にお礼をお伝え下さい。
私達に、ここの位置を教えて下さったのは、大佐です。
・・・本当に、ありがとうございました。」
敬礼をし、涙を浮かべたの手を取り、アリオスに乗り込むと、
ケルディムがアリオスを抱えて、空へと飛んだ。
「さようなら、ピーリス中尉。」
画面に映る中尉を見つめ、はそっと呟いた。
・・・中尉、そして大佐。
4年間、を見守ってくれて感謝します。
は、僕が、必ず幸せにしてみせる・・・
僕は横に居るの手を握り、そう誓った。
おしまい。
☆☆☆
問題のあの回。脳内補完ではこうです。笑
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