舞踏会(sideアレルヤ)




王留美から暗号通信が届いた。
『アロウズの上層部が、経済界のパーティーに出席する。』

スメラギさんのミッションプランのもと、ティエリア、刹那、
そして、僕とがそのパーティーに出向くことになった。

ティエリアは、敵の内部を探る為に。
刹那は、その援護。
僕とも、ふたりの援護に当たる。

本当は、にはミッションに参加して欲しく無かった。
闘いに、巻き込みたく無かった。
だが、は僕と一緒に居ることを望んでいる。
そして、スメラギさんも、男一人の僕だけよりも、
とふたり、カップルで居る方が周囲の目を欺けるから、ということで、
もミッションに参加することになった。


会場へ向かう、アリオスの中。
「・・・・・大丈夫かい?」
僕は心配になって、横に立っているの手を握った。

「うん、大丈夫だよ、アレルヤ。
 アレルヤが私を護ってくれる。そうでしょ?」
にっこりと笑う

「ああ。そうだね。
 は、僕が護るよ。」

僕の手を握り返してくる
僕は、握っている力を強めた。


会場に着くと、女装したティエリアは建物の中へ。
刹那は、運転手に変装をして、車の傍で待機。
僕とは、ドレスアップして、会場の庭で、一般客を装って待機。
僕たち二人は軍に顔がバレている為、薄暗い外で、静かに成り行きを見守る。
は木に背を預け、僕は、に向かい合い、寄り添うように立っている。
傍からは、仲の良いカップルが抱き合っているようにしか見えないだろう。

僕らの近くを、一人の若い女性が通りかかった。
女性は、僕らをちらりと見ると、少し赤い顔をして、ぷい、と目を背けた。

・・・やっぱり、と来て正解だったようだ。
さすが、スメラギさん。

僕が感心していると、

「あれ・・あの子・・・どこかで・・・?」
が今の女性を見て、声を上げた。

「知ってる子?」

「んー・・どこかで会ったような・・・」

「!刹那に接触する!!」

僕らの間に緊張が走る。
その女性は、刹那に声を掛け、親しそうに話し出した。
刹那も、少し驚いてはいたが、静かに話している。

「・・・どうやら、知り合いみたい、だね・・・」

僕らは、少し安心して、ふっと笑い合った。


僕の目は、刹那から、また、へと戻った。
肩を大胆に開けたドレスに、左肩の銃傷を隠す為のショールを掛け、
いつもより濃い目の化粧をしたは、僕の心を虜にした。

「アレルヤ。」

ピンクのルージュをつけた唇が、僕の名前を呼ぶ。

「タキシードのアレルヤ、カッコいい・・・
 後ろ髪を結んでるこの赤いリボンも、とても似合ってて・・・
 まるで、おとぎ話に出てくる王子様みたい」

は、僕の髪や頬に優しく触れた。

こそ、ドレスとっても似合ってる。
 それに、お化粧も・・・」

の体に僕の体を密着させ、の肌を撫でた。
その感触が、とても官能的で、僕の脳を痺れさせた。

「・・・・・」

僕は、ミッション中であることも忘れ、にキスをした。
はじめはついばむように、そして、それだけでは飽き足らず、次第に、貪るように。
遠くで舞踏会の音楽が流れている。
空には、満天の星。
そして、腕の中には、愛しいひと。
僕らは雰囲気に酔いしれ、夢中でくちづけを交わした。


「ううぅっっ!!!」
「おい、どうした?!」

女性の呻き声と、刹那の声で、僕たちは夢から醒めたように現実に引き戻された。

そっと覗くと、苦しんでいる女性を、刹那が介抱しようとしていた。
そこにもう一人、長髪の男性が加わった。

「!!
 あれ・・軍の人だ!!」
僕の腕の中で、が小さな声で叫んだ。

「!!
 軍の・・?!」

「うん。確か・・ビリー・カタギリ!
 刹那・・・バレなければいいけど・・・」

僕とは、ハラハラしながら見守っていた。

、いざと言う時は・・・僕は闘うことになる。
 は、逃げるんだ。いいね?」

の耳元でそう囁くと、は僕を見つめ、こくりと頷いた。


「こいつは、ソレスタルビーイングだ!!」

ビリー・カタギリという男が、突然叫び出した。
恐れていたことが起こってしまった。

刹那は駆け出し、その後ろを敵が追う。

僕は、その敵の前にはだかると、刹那を逃がす為、追手に向かって攻撃を始めた。

「!アレルヤ!」
刹那が振り返った。

「行くんだ、早く!」
僕の言葉に刹那は頷くと、走り去った。

何人かの敵を蹴り倒したところで、更に、銃を持った追手がやって来た。
僕は距離をつめ、銃を蹴り飛ばし、そして、殴り倒した。
だが、一人、まだ残っていたようだ。
僕が攻撃しようとしたその時・・・

女性物の靴が飛んできて、追手の顔面に直撃した。

「アレルヤ、こっち!
 刹那はもう大丈夫だから!」
が、自分のパンプスを投げたらしい。

相手の一瞬の隙のうち、僕はの待つ木陰へ駆け込んだ。

追手が、僕らを捜している様子が見てとれる。
ここから走り去ってもいいが、もし、また見付かったら・・・

そう思案していると、

「アレルヤ。こうしよう。」
が、残っているもう一足のパンプスを脱ぎ、僕に見せた。

「これ、出来るだけ遠くに投げて。」

僕は、パンプスを受け取ると、腕力に任せて、遠くへと放った。


ガサガサッ

遠くの草むらに、音を立ててパンプスが落ちた。
すると、

「おい、あっちだ!」

追手は、音のする方へ導かれるように消えていった。

僕とは頷き合い、木陰から走り出した。
そして、アリオスを待機させてあるポイントへと急いだ。



帰艦途中、ティエリアと刹那は、敵1機と交戦していたらしい。
僕らがそのポイントに着くと同時に、ロックオンも到着。
敵は、分が悪いと判断したのか、退避していった。

大した戦闘にならずに済み、僕は内心ほっとした。
を乗せたまま、なるべくなら闘いたくない・・・

僕たちは、一路、トレミーへと向かった。


ふと気がつくと、横に居るが、痛そうに顔をしかめていた。

そういえば・・・
の両脚は、靴を履いていない。
裸足の状態で、けっこうな距離を走っていたことになる。
僕は、気付くのが遅すぎだ、と、自分を叱った。

、おいで。」
操縦をオートにし、の手を取ると、自分の膝の上にを座らせた。

「は、恥ずかしい・・・」
は、顔を真っ赤にして俯いた。

「恥ずかしくないよ。
 ほら、見せて。
 あぁ、もう。こんなにして・・・」
の脚を見ると、真っ赤になって、小さな石や砂で汚れている。
それを取り除こうと、なるべく優しく手で払った。

「い、痛っ・・」
が小さく叫び声を上げる。

「ごめんね、。こんなにさせてしまって・・・」

「うぅん。アレルヤのせいじゃない。私が・・・
 ・・んっ・・うぅっ・・ふ・・・」

僕が脚をさする度、痛むのか、呻き声を上げる


『こらーー!!!!一体ナニやってるの、あなたたちは!!!』
突然、スメラギさんの怒号が響いた。

「え?あれ?通信ONにしてましたっけ??」
僕は不思議に思い、うわずった声で返答した。

『おまえら凄ぇなぁ、狭い機体の中でするなんてよぉ。』
ロックオンが感心したような、それでいて呆れたような口ぶりで入ってくる。

「え?するって、何を?」
僕は分からず、疑問のまま、トレミーへと着艦した。


脚を怪我しているを歩かせまいと、僕はを抱きかかえ、
先程の疑問を解消する為、ブリッジへと向かった。

「ただいま戻りました。
 ・・・あの・・さっきの件ですけど・・・??」

スメラギさんを始め、クルー皆の目が冷たい。
僕とは顔を合わせ、「?」と疑問の顔のまま、スメラギさんに返答を求めた。

「あなたたちが仲が良いのは知ってるわ。
 でも、いくら帰艦中だからといって、ミッション中に、あんなことするなんて・・・」
どうやら、スメラギさんは怒っているらしい。

「?あの・・僕たちが、何かしましたか・・・?」
いや、確かに、木陰でキスはしたけれど、あれはバレてないはずだ。
それに、一応、周囲を欺く為のカモフラージュ、とも言えなくもない。

「何かしたか、って、ナニしてたじゃないの!」

「??」
僕の疑問の顔が気に入らなかったのか、スメラギさんは、フェルトに合図をした。

「これは、さっき、全艦、全ガンダムに、サウンドオンリーで流れた通信よ。」

さきほどの、僕との会話がブリッジ内に流れる。



、おいで。』

衣擦れの音。

『は、恥ずかしい・・・』

『恥ずかしくないよ。
 ほら、見せて。
 あぁ、もう。こんなにして・・・』

肌をさする音。

『い、痛っ・・』

『ごめんね、。こんなにさせてしまって・・・』

『うぅん。アレルヤのせいじゃない。私が・・・
 ・・んっ・・うぅっ・・ふ・・・』



ここで、フェルトが音声を止めた。
皆、なんだか顔を赤らめている。
フェルトなんか、真っ赤だ。


・・・なんだか、嫌な予感がする・・・

「あ、あの・・・
 もしかして、僕たちが・・その・・・
 いやらしいことしてたとか・・そう、思ってるんですか・・・?」
恐る恐る聞いてみた。

「だから、シてたんでしょ?」
スメラギさんが、顔を赤くしてこちらを睨んでいる。

・・・やっぱり・・・!!!

「ち、違います!!!
 僕たち、そんなことしてません!!!
 ほら、これ見て下さい!!の脚!!」
必死で、の脚を皆に見せた。

「刹那を逃がす為に、敵と応戦していたんです。
 そして、が自分の靴を利用して、逃げる時間を作ってくれたんです!
 は裸足のまま走ったから脚を怪我して、
 それで、僕、脚についてた石とかを取ってあげてたんです!!」

「そうです!私たち、なんにもしてません!
 あの・・痛くて、変な声出して・・誤解させてしまって、すみません・・・」
が、恥ずかしそうに俯く。

「・・・そう。
 私達の勘違いだった、ってわけね?」

僕らは、うんうん、と必死に頷いた。

「そうですよ、スメラギさん。
 いくらなんでも、コックピット内でするとか、無いですよ。」
僕が笑って弁解すると・・・

「嘘。前、キュリオスの中でシてたじゃない。」
ぼそり、と、スメラギさんから呟かれる、恐ろしい事実。

その言葉に、僕とは顔を真っ赤にし、時が止まったようにフリーズした。
確かに・・・ハレルヤのせいとはいえ、前に、一度だけ・・・
バレていたとは・・・

「へぇ、凄ぇな。
 コックピットってことで、興奮すんのか?
 おたくら、大人しそうな顔してんのに、やることヤってんのな。」
ロックオンがにやにやと笑って口を挟む。

「あ、ああ、あのっ、の脚、処置して来ますっ。
 失礼します!」
僕は恥ずかしさのあまり、一礼すると、医務室に向かった。


「ご・・ごめんね、
 恥ずかしい思いさせて・・・」
真っ赤になりながら、僕はの脚を消毒し始めた。

「うぅん。
 私も悪かったから・・・
 ごめんなさい、アレルヤ。」
も顔を赤らめながら、俯いた。


そんなを見て・・・
誤解されても、となら、いいかな、なんて思う自分が居た。



おしまい。


☆☆☆

アレルヤの王子様姿見たい。

↓宜しければ感想などどうぞ♪


【戻】