それは、ファーストミッションが始まる少し前…

僕は自分のガンダム、キュリオスの整備状態を確認する為、コンテナへと向かった。
キュリオスの傍には、整備道具に紛れて、読み込まれたような本が置いてあった。手に取ってパラパラとめくる。
どうやら、日本の小説らしい。

「あ、あの…何か…?」
最近、ソレスタルビーイングに入って来た整備員のが、恐る恐る僕に声を掛けて来た。

「あぁ、ゴメン邪魔して…僕は、アレルヤ・ハプティズム。このキュリオスのガンダムマイスターだ。」
「!キュリオスの!ゴメンなさい!私、まだ皆さんのこと覚えて無くって…失礼な事を…」
物凄く焦ってワタワタしてるに対して、逆に、僕の方が申し訳無く思ってしまった。
「いや、そんな…気にしないで。それより、この本、君のかい?」
「あっ、はい。凄く感動するお話で、私、大好きなんです。何度も読み返してて…」
目をキラキラと輝かせながら話す

そんな表情と、華奢な体つき、細く白い指、その手にした整備員用の端末、それに、キュリオスと、読み込まれた本…
どれもまとまりがなくて、ギャップがあるのに…それが逆に心地良かった。
なんだか僕は、こんなの事をもっと知りたいと思った。

「もし、良ければ…この本、貸してくれないかな。読んでみたいんだ。」
「!良いですよ。是非、読んでみて下さい、アレルヤさん♪」
「ありがとう。それと…アレルヤ、で良いよ。これから宜しくね、。」
「はいッッ!」

ニッコリ笑うの笑顔に、僕は思わず見とれてしまった。


それから数ヶ月後。
次のミッションに向けての待機中、僕はこの本を読んでいた。
ひとつひとつ、意味を噛み締めながら読んでいると、がこの本を好きだと言った気持ちが何となく分かった。

その中で、

「あなたはまだ覚えているでしょう。
私がいつかあなたに、造りつけの悪人が世の中にいるものではないと言ったことを。
多くの善人がいざという場合に突然悪人になるのだから油断してはいけないと言ったことを。」

…このくだりに、僕はどきりと胸を震わせた。
自分の事を言われているようで…だが、人間にはそういう面が確かにあるらしい…

僕が難しい顔をしながら本を読んでいたせいか、ロックオンが「休める時に休んどけよ、すぐに忙しくなる」と声を掛けて来た。
僕は別にリラックスしているつもりだったから、特に返事もせず、硝子向こうのキュリオスに目を向けた。

キュリオスを整備してくれた
この本を好きだと言う
僕の中にが溢れる。もっと、もっと、知りたいと思った。


おしまい。


☆☆☆

あの、4話で読んでる本は、実はヒロインちゃんからの借り物だったらイイなぁと思って書いてみました。

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