乙女の不安


「早く来て、アレルヤ…
私…死にたくない、死にたくない……」


人革連による猛攻撃の中。
電力を殆どカットしている為、薄暗い艦内。
モニターから、信じられないクリスティナの言葉を耳にし、は、とても動揺した。


なに…?
もしかして…クリスも、アレルヤの事を……
どうしよう、私…
私のこの気持ちは…
抑えた方が良いの……?
止めた方が良いの……?

どうしよう…
どうしよう…


アレルヤ達が無事に戻るかどうか、という事も勿論気にはなったが、それより、
同じクルーのクリスティナが、同じ男性を好きかも知れない、という事の方が、10代の乙女には大問題だった。


ようやく、人革連のMSも撤退し、ガンダムマイスター達が帰還したのだが…
キュリオスの鹵獲未遂、ナドレの露呈と言った問題点が浮かび上がる中、
の心は、その他の事が原因で、もやもやとしていた。


「おい、。キュリオスの状況を確認して来てくれ。」
イアンがに声を掛ける。

「!はいっ!すぐに!!」

いけない、仕事仕事…!!

は、緊張した面持ちでキュリオスに駆け寄ると、未だ降りてこないアレルヤを下で待った。
だが、なかなか降りてこない。

どうしたんだろう、アレルヤ…
無事だとは聞いていたけど…
っ!もしかして、怪我してるとかっ?!

は心配になり、急いでキュリオスのコックピットへと向かう。

「あの…アレルヤ…大丈夫?何処か、怪我でも……っ!!!」


泣いていた。
アレルヤが、誰にも悟られまいと、無言で泣いていた。

はそんなアレルヤの表情に気付くと、胸が締め付けられるような思いで、声をかけるのを止めた。


「…あぁ、
僕は大丈夫。
でも、キュリオスが……
人革連から傷つけられてるかもしれないから、…整備を頼むよ。」

アレルヤが声を絞り出し、ようやくへ話す。


は、アレルヤを抱き締めたくて仕方が無かった。
アレルヤの力になりたかった。
その涙を、その苦しい想いを、少しでも自分の手で拭い去ってしまいたかった。

だが…

先程の、クリスティナの言葉が脳裏をよぎる…

ここで自分だけ、そんな行動を取ったら…クリスに何と思われるか…
アレルヤも大事だが、勿論クリスも大事だ。
どうしても、そんな行動は取れない…

アレルヤの為に、
クリスの為に、

の中で葛藤が生まれ、うまくアレルヤに接する事が出来ずにいた。


「キュリオスの整備は、任せて。
アレルヤ…ゆっくり休んでね。お疲れ様……」

そう、声を掛けるので精一杯だった。


キュリオスの整備もおおかた終わり、休憩を取ろうと食堂へ向かう途中。
は、クリスティナとばったり出会う。

「っ!クリス…お疲れ様。あの…さっきは…大丈夫だった?」

「あぁ、ごめんね、心配かけて。フェルトにも怒られちゃったよ。もう、大丈夫だから。」

ここで聞かないと、…絶対に後悔する。
今後のアレルヤへの態度にも関わってくるから…と、
は意を決し、クリスへと質問をぶつけてみる事にした。

「あの…クリス…。
クリスは、あの、あ…アレルヤの事、どう思ってる?!!」

語尾が思わず激しくなり、クリスはその声に少し驚いたようだ。

「え…アレルヤ?…なんで…??」

「何で、って…だって、さっき、あの…」

真っ赤になるを見て、クリスは、ははぁ、と納得した。

「じゃぁ、は?は、アレルヤの事、どう思うの?」

「えっ!!!わ、私…?!私は…あの…」

クリスにじっと見つめられ、

ここは正直に告白して、クリスの気持ちも確認して、それから…

…と、心を決めたは、

「私…アレルヤが好き。大好き。だから、あの…もし、クリスが…」

「ふふっっ!!がアレルヤを好きなのって、誰が見ても分かるよぉ。」

「…え……、え、そうっ?!!バレバレ?!」

「うん、バレバレ。」

可笑しそうにクリスが笑う。

「そ、そういえば…スメラギさんにも、バレバレだった…」

「でしょ?ふふっ、だから、大丈夫だよ、誰もアレルヤを取ろうなんて考えないから。安心して。」

「クリス…なんか…ごめんね、私。疑ったみたいな感じで…ホント、何て言っていいか…」

クリスの言葉に安心しつつも、疑った自分を恥じ、俯く

「いいって。恋する乙女は大変だもんね。
きっと、アレルヤもの事、好きだと思うよ、頑張って!」

「クリス…ありがとう。」

クリスの優しい言葉に、はほっと顔をほころばせる。


クリスと別れ、食堂へ向かう
そのの背中を見送りつつ、クリスは少し口を尖らせた。

ちょっとは、アレルヤの事、気になってたんだけどね。
あんな真剣なの邪魔しちゃ、いけないもんね。

さて、どっか、他にイイ男、いないかなぁ♪

くるり、とに背を向けると、クリスも新たな気持ちで歩き出した。



こんな、乙女達の気持ちも交差する銀河。


おしまい。

☆☆☆

あの、クリスの悲痛の叫びにとってもビックリしたんだけれど、それ以来、何の進展も無く。。。
きっと、ヒロインちゃんは、こんな気持ちでいっぱいだったろう、と思って☆

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