太陽が燃えている


ココロの中は、なんだか黒いもやもやとしたものが広がっていた。

僕は、英語の問題集から顔を上げ、鳴らない電話を見つめた。

今日は土曜日。
いつもなら、休日の前夜に電話がかかってくるのだ。
から。
テニスクラブへの誘いの電話が・・・。

は、僕の2コ下の青学中等部1年生。
女子テニス部所属だけど、男女混合を試験的に取り入れてる為、
だけ、僕たち男子テニス部で一緒に活動している。

とびぬけて美人!というわけではないが、まだあどけなさの残る可愛らしい顔で、
一つに束ねた栗色の長い髪がとてもよく似合っている。
僕らでもキツイ男テニの活動に、一生懸命ついてきている。
そのひたむきな姿が、僕の心臓を掴んで仕方ないのだ。

そう、僕は・・・。

☆☆☆☆☆

鳴らない電話は、翌日の日曜になっても、そのままだった。

僕の方から電話しようか、と、何度も思った。
でも、このもやもやした気持ちに気付かれやしないかと不安で、受話器を取れずにいた。

外は、僕のココロとはうらはらに、憎らしい程の快晴だ。
もうすぐお昼になろうとしている。
いつもなら、テニスクラブでと待ち合わせしている時間だ。

家に居てもしょうがない。

僕は、醜い自分を洗うかのように、陽射しの明るい世界へと歩き出した。

☆☆☆

脚は自然に、テニスクラブへと僕を導いていた。

ボールの弾む音や、黄色い歓声が響いている。
なんだか、今の僕には全く似つかわしくない場所に思える。

と、その時・・・。

僕の眼に映ったのは、会いたくて仕方が無かったの姿だった。

・・・何故、ここに?

は、テニスボールを拾いつつ、傍に立つ、このクラブ専用のコーチ(男)と笑い合っていた。

・・・こんなもの、見たくない。

見たくもないのに、僕の眼はの姿を捉えたままだった。
僕の中のもやもやしたモノは、一気に体中に広がり、真っ暗闇に僕を引きずり込んでいった。

「不二先輩!!」

僕に気付いたは、大きく手を振って、跳ねるボールのようにこちらに駆け寄って来た。

僕は、むかむかする気分をムリヤリ胸の奥に押し込み、笑顔で隠した。

「やぁ、。コンニチハ。」

・・・どうして、ココにいるの?

・・・ナニしてるの?

・・・あのコーチと、ナニ話してたの?

僕のココロはもやもやで埋め尽くされたまま。
けれど、どれも口には出さない。出せないんだ。

それを知ってか知らずか、は、

「今日は玉拾いのバイトなんですよ。時々、ここでバイトしてるんです。
アッ、そうだ。不二先輩、今から少し、お時間ありますか?」

と、言って来た。

勿論、断る理由なんて、ない。

「うん。天気が良いから、散歩してただけだからね。」

「ちょっと付き合って貰いたいトコロがあって・・・」

「ふふっ。いいよ。一緒に行こうか。」

僕は、この時、きっと自然に笑えていたと思う。
だって、の笑顔があまりにも可愛かったから・・・。

☆☆☆

に連れて来られたのは、以前僕が「お気に入りの場所なんだ」と言った、
噴水のある公園だった。

ベンチに座った僕らは、周りからは恋人同士に見えるだろうか・・・?

「コレ・・・昨日、バイト代が初めて入って。
いつもお世話になってる不二先輩への・・・お礼です・・・」

そう言って、は、可愛くラッピングされた包みを僕に差し出した。

「・・・ありがとう。」

僕は、素直に受け取った。
中を開けてみると、スポーツタオルだった。

なんだか、今までのもやもやとした気持ちが少しだけ晴れたような気がした。

「良かったーー。
受け取ってくれなかったら、どうしようかと不安だったんです。
けど、初めて入ったバイト代は、絶対、不二先輩の為に、って決めてたんです。」

ちょっとうつむきかげんに話すがあまりに可愛くって、つい、自然に、僕はを抱き締めてしまっていた。

僕の中で体を強張らせる
でも、抵抗しようとはしない。

僕は、内心シマッタ、と思った反面、ずっとこのままを抱き締めていたい気分だった。

腕の中のは、とても温かくて、まるで春の日の陽光のようだった。
そう、それはまるで、寒い冬の闇をも優しく溶かすような・・・。

「ありがとう、。大事にするよ。」

僕とは、顔を見合わせて、そして、笑った。


僕のココロの中には、もう、もやもやとしたものはなかった。

ただ、もう、への熱い想いだけが溢れていた。


おしまい。


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