空の青と本当の気持ち


今日、この全国大会が終われば、僕達三年は引退・・・。
そんなこと、分かりきったことだけど・・・。

も、そのことを感じているのか、試合では、かなりの迫力を見せた。
(僕と、一年生のは、ダブルスで組んでいるのだ。)

昨夜、僕らはふたり、秘密の笑顔を交わした。

そのお陰で、僕も、も、実力以上の結果が出せて、青春学園は優勝することが出来たのだった。

表彰式も終わり、メンバーは、河村寿司へ、恒例の祝勝会へと脚を進めた。


「不二先輩。」

越前が僕に話しかける。

「アレ、放っといていーんスか?
この世の終わり、って顔、してるけど?」

越前が指差した先には・・・の、どよーーーん、と暗い姿があった。

僕は、越前に、先に行くよう伝えてから、の元へと走った。

「・・・お疲れ、。良かったね、勝てたよ、僕たち。」

「・・・不二先輩・・・。ハイ・・・。」

今にも泣き出しそうな、の顔。

「どうしたの?嬉しくないの?」

「・・・嬉しい・・・です・・・。」

消え入りそうな声で返って来た。

僕は、なんだかいじわるしてみたくなって、の両頬をぷにっとつねった。

「ほら。嬉しいなら、笑わなくっちゃ。ね!」

ぷにゅう〜〜〜〜

「せっ・・・せんぱいぃぃ〜〜〜〜」

ぶわっとの瞳から涙が溢れ出る。

僕は焦って、の両頬から手を放し、

「ごめっ・・・痛かった?」

と、謝った。

「ちがっ・・・ほっぺたは、痛くないです・・・。
ココが、痛いんです・・・。」

は、自分の胸に手を当てた。

ムネがどうしたの?と、一瞬、手をやりそうになったが、
そんなトコ触っちゃヤバイでしょ、と、自粛して、もう片方の手で、その手を抑えた。
ナニやってんだ、僕は。

「不二先輩が引退する、って考えただけで・・・私・・・」

僕はドキッとした。
僕の為に、泣いてくれてるんだ・・・?

「なんだ。そんなコトかーーー。」

が、涙をいっぱい溜めた瞳で僕を見つめる。

「そっ・・・そんなコトって・・・」

「そんなコトで、この世の終わりになってくれるなんて。
・・・嬉しいね。」

「だって、だって、不二先輩、引退しちゃうんですよ?
先輩とのダブルスも、・・・今日で終わり・・・」

涙をぼろぼろ流しながら、一生懸命話すがあまりに可愛くって、
僕は思わず、をぎゅっと抱き締めた。

「っ!」

がビックリしたように言葉を詰まらせる。

僕自身もちょっとびっくりしてるんだけどね、内心。

「今日で部活は引退だけど、でも・・・
終わらせるつもりはないよ。
テニスも、とのダブルスも・・・。」

「?」

「テニスでも、テニス以外でも・・・
僕のパートナーで、いてくれる?」

「え・・・??」

きょとんと僕を見つめる
瞬きする度に、瞳に溜まった涙がこぼれ落ちる。

「・・・が、大好きなんだ。」

空の青さの下、僕の本当の気持ちが言葉になった。
僕は、やっと言えた安堵感も手伝って、にっこりと笑えた。

「ほ・・本当ですか?」

「うん。僕の、本当の気持ち。」

「ほっ・本当の、本当?!」

は、信じられない、という顔で、念を押してくる。

「もォっ・・・本当の、本当に!!
僕は、が、大好きなんだよ。だから・・・」

僕は、戸惑っているの手を取り、ゆっくり歩き出した。

「これからも、よろしくね。」

に、にっこりと笑いかける。

「・・・はいっ。」

は、少し恥ずかしそうに、でも、嬉しそうにうなずいてくれた。

「早く行かなくちゃ、桃たちに、お寿司、全部食べられちゃうよ。」

「わーっ、早く行きましょっ!」

そう言うと、は、僕を引っ張って走り出した。

「・・・不二先輩・・・」

「ん?」

は、少しだけ振り向いて

「私も・・・不二先輩が、大好きです。」

と、小さい声で、告白した。

照れているのか、それとも、オレンジ色に変わってゆく空の所為なのか・・・
の顔が、真っ赤に染まった。

「うん。ありがとう。」

僕は、これ以上ない幸福を感じ、つないだ手に力を込めた。


青い空は、オレンジ色に変わり、そして、黒い闇になるだろう。
でも、僕の闇の中には、月よりも、星よりも、きらきらしているナニかが、
ずっと輝いてくれるんだ。


おしまい。


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