もしもハレルヤが喧嘩番長だったら2


「今日は、コーラサワーとマネキンと一緒に帰れ。いいな?」

珍しく、用事があるとかで、一緒に帰れない、と言うハレルヤ君。
お付き合いはじめてから、毎日一緒に帰っていたから、今日が始めて。

「でも、、私、一人で帰れるし・・・」

過保護なハレルヤ君に戸惑いながら反論すると、

「うるせー!いーから、俺の言う通りにしてろ!」

そう怒鳴ると、カティちゃんを「おい、ちょっと」と呼んで、
少し離れた所でこそこそと話をしだした。

・・・なんか、・・妬けちゃう・・・
カティちゃんはコーラサワー君とお付き合いしてる、って分かってるんだけど、
やっぱり、他の女の子とああやってお話されると、、、嫌だなあ。

そんな私に気を遣ったのか、コーラサワー君が、

ちゃん、心配無ぇよ!
 ハレルヤはちゃん一筋だし!
 マネキンさんは、俺の彼女だしな!」

そう言って、きらりん!と、笑ってくれた。
ハレルヤ君とは別の種類の、明るい笑い方。
カティちゃんが惹かれたのも、なんとなく分かる。

そうこうしてたら、ハレルヤ君たちの話が終わったみたいで、
突然、ぎゅっ、と抱き締められると、大きなリップ音をたてて、何度かキスされた。

「んんっ・・ちょっ、・・ハレルヤ君!ダメだよ、こんなところで・・っ・・・」

押しのけようとするけど、逞しい腕が、しっかりと私を抱いている。
ちら、と、カティちゃんたちを見ると、こっちを見ないように背中を向けていてくれていたから、助かった!

「いいか。」

頭上から、ハレルヤ君の、真剣な声が落ちてくる。

「まっすぐ、家に帰るんだ。
 寄り道なんかすんな。
 一人で帰ろうとすんな。
 家まであいつらと一緒に帰れ。
 絶対に、だ。
 ・・・分かったな?」

異常なまでの執拗さで、念を押してくるハレルヤ君を不思議に思いながらも、私は、取り敢えず、こくり、と頷いた。

もう一度、キスされると、解放され、

「じゃあな。
 気を付けて帰れよ。
 ・・・また、明日。」

ハレルヤ君が、手を振ってくれる。

「おい、おめーら。頼んだぜ?」

意外な言葉に、私も、カティちゃんたちも驚いて、
そして、カティちゃんとコーラサワー君は、こくり、と頷いた。



学校を出ると、もうすぐ、夕暮れだった。
途中まで歩くと、私は、隣りに居るカティちゃんに、

「ねぇ、ちょっと、寄りたい所があるんだけど。いいかな?」

と、尋ねてみた。

「ダメだ。奴から、寄り道はするな、と言われているだろう。」

案の定の、カティちゃんの厳しいお言葉。
私も真面目な部類だけど、カティちゃんは、私に輪をかけての真面目さん。
1学期の委員長も、カティちゃんがなれば良かったのに、と思える程。
きっと、学年が上がれば、生徒会長とかにもなれそう。

う〜〜ん!でも!私も、引き下がれない理由があるのだ!

「そこをなんとか!
 あのね、ほら、ちょっと行った所に商店街があるでしょ?
 あそこの雑貨屋でね、ハレルヤ君に合いそうなピアスを見つけたんだ。
 その時は、持ち合わせが無くって、買えなかったんだけど、
 今日は、お小遣い出たばっかりでさ。
 そのピアス、シルバーに、金色の石がはめ込まれててね、
 ハレルヤ君のオッドアイみたいで、いいな!て思ったんだ。
 ね?ちょっとだけ!買ったら、すぐ帰るから!」

「行きたければ、明日、奴と一緒に行けば良いではないか。」

「それじゃダメだよ。サプライズでプレゼントしたいんだから〜!」

私達のやりとりを見ていて、後ろから、コーラサワー君が、

「マネキンさん、ちょっとぐらいなら良いじゃないスか!
 乙女心ってやつですよ!」

と、助け舟を出してくれた。
ナイス!コーラサワー君!

「お前ッ!本気で言ってるのか?
 あの商店街は・・・」

「分かってますって!
 俺もついてますし!すぐ買って、すぐ帰れば、問題無いっしょ!」

二人でもめてたみたいだけど・・・・
結局・・・

「・・・分かった、
 ただし、本当に、すぐに買って、すぐに帰るんだぞ?
 いいな?」

「わー!ありがとう!二人とも!!」

私は大はしゃぎで、二人を引き連れ、商店街へと向かった。



着いたのは、ハレルヤ君とお付き合いする前から、何度か来ていた雑貨屋さん。
お目当てのピアスをラッピングして貰い、すぐにお店をあとにした。

「ね?すぐ終わったでしょ?
 だって、もう決めてたんだもん!」

私はスキップをしそうな程嬉しくなって、
明日、いつハレルヤ君に渡そうか、とか、
ハレルヤ君は喜んでくれるかな、とか、
このピアスを着けたハレルヤ君はどんなかな、似合うかな、とか、
色んな想像をしながら、商店街を抜けようとした。

その時。

商店街出口付近のゲームセンターから、数名、
他校の男子生徒がガヤガヤと出てきた。
見るからに、悪そう。
そう、まるで、ハレルヤ君たちみたいな・・・

私は、目を合わせまいと、鞄をギュッと胸に抱きかかえ、
カティちゃんとコーラサワー君に護られるように挟まれ、その場をすり抜けた。

ほっ、と、安心した、瞬間!

後ろから、がっしりと腕を捕まれ、驚きのあまり心臓がどくん!と跳ねる。
捕まれた腕に、相手の指が食い込み、凄く痛い。
私は、痛さで顔をしかめながら、相手を睨み付けた。

相手は、同じ年位の男子高生。
私の顔を覗き込むと、

「間違いねぇ。こいつ、ハレルヤの女だぜ!」

後ろの仲間に、そう声高に告げた。
仲間は、きょろきょろと辺りを見回すと、

「今日は、ハレルヤは一緒じゃねーみてーだぜ。
 こいつは、いーチャンスだな!」

そう笑いながら、ぐいぐいと私を引っ張って行こうとした。

「放して!!」

私は、ハレルヤ君に迷惑かけたくなくって、鞄で思いっきり殴った。
相手の手が離れたので、

「カティちゃん!コーラサワー君!!」

二人と一緒に、駆け出した。
でも・・・
女子が男子の足に敵うわけなく・・・
あっけなく、また、男子生徒に捕まってしまった。

「放しやがれ!!」

コーラサワー君が向かって行くけど、喧嘩慣れした相手には不利で、すぐに殴り倒されてしまった。
男子生徒たちの手は、今度はカティちゃんまで及ぼうとしていて・・・

「ダメ!!!」

私は、両手を捕まれながらも、その相手に、体ごとぶつかっていった。

「なにしやがる、このアマ!!」

ぶつかられた男子が、ムカついたのか、私の頬を殴った。
でも、それでも構わない!

「カティちゃん、逃げて!!
 ここに居たら、危ない!!」

私の所為で・・・
私が、ハレルヤ君の、カティちゃんの言う事をきかなかった所為で・・・
こんなことになってしまったんだから・・・
カティちゃんまで、危険な目に遭わせるわけにいかない!!

「早く!カティちゃん、逃げて!!」

カティちゃんは、戸惑っていたみたいだけど、すぐに、この場を走り去って行った。
・・・良かった・・・
あとは、コーラサワー君、だけど・・・
見ると、だいぶ、傷付いていた。
本当に、自分が、馬鹿な所為で・・・
申し訳無く思った。

私とコーラサワー君は、相手に引っ張られて、商店街裏の空き地に連れて来られた。
ここが、彼らの溜まり場なのだろう。
お菓子やジュースのゴミが、たくさん散らばっていた。

「やい、てめーら!
 いい加減、ちゃんを放せよ!!」

体は傷付いても、威勢良く、怒鳴るコーラサワー君。

「ふぅ〜〜ん。
 、っつーのか、ハレルヤの女は。
 、何つーんだ?名前は?」

そう問われて、私は、ぷい!とそっぽを向いた。
絶対、言うもんか!

そんな私の態度が癪に障ったらしく・・・

バシッ!!

またしても、頬を殴られてしまった。
口内に、鉄の味が広がる。
つー、と、血が口の端から零れた。

「てめぇ・・女の子に手ぇ上げるなんて!」

こっちに向かって来たコーラサワー君だったけど、またしても、他の男子に殴られ、倒されてしまった。
それを、息を飲みながら見ていると・・・

「おい、
 おめーはこっちの相手だ。」

いきなり、制服のブラウスに手をかけられ、ビリビリと破かれ、胸が見えそうになる。

「っ!!!」

恐怖で、足がすくんで、声も出ない。
どうしよう、どうしよう・・・
ハレルヤ君の、言うこと、聞かなかったから・・・

相手の手が、太腿を這い、気持ち悪さから、涙が出る。

「・・・?
 まさか・・・
 アンタ、処女か?」

そう問われ、恥ずかしさから、カッ、と、頬が熱くなる。

「ハッ!!
 こりゃあいい!
 あのハレルヤが、まだヤッてねーとはなあ!!
 どーゆーことかは分からねーが・・・
 ま、美味しく頂かせて貰おうか!」

相手が、ニタニタと気味悪く笑う。

「やっ、やめろ・・っ・・」

コーラサワー君も焦り、起き上がろうとするけど、他の男子から蹴られ、起き上がれない。

「やっ・・やだっ・・やだぁっ・・・
 は、ハレルヤ、君・・っ・・・」

「はいはぁ〜〜ぃ」

聞き慣れた愛しい声に、ハッ、となり、涙の溢れる目をこらして、辺りをきょろきょろ伺うと・・・

ハレルヤ君が、出入り口に居た見張りの男子を殴り倒したのだろう、唸りながらうずくまってる数人をあとに、ゆっくりこっちへ向かって来る。
その後ろには、カティちゃん。
きっと、カティちゃんが、ハレルヤ君を呼んで来てくれたんだ・・・

「いつもやられてばっかりだと思うなよ!」

そう喚きながらハレルヤ君に向かって行った男子たちを物ともせず、最速で私の所へ来てくれると、
私を掴んでいる男子の腕を、まるで捻じ曲げるように(実際に折ったのかも知れない・・・)掴むと、

「・・・怖かっただろ・・・」

少し、哀しそうな目をして、そう、呟いた。
私がこくり、と頷くと、

「・・・だから、・・・寄り道すんな、って、言ったんだ。」

空いた手で、私の、殴られた頬をさすり、涙を拭うと、
掴んでいた男子に蹴りを入れた。
男子は、よっぽど激しかったのだろう、血を吐きながら、のたうち回った。

解放された私に、ハレルヤ君は自分の学生服を着せてくれて、きつく抱擁をした。

「いいか、
 今度は、言いつけ、守れるな?」

こくり、と、頷くと、

「俺が合図するまで、絶対に目を開けるな。閉じていろ。
 耳も、両手で、塞いでろ。
 ・・・いいな?」

もう一度、こくり、と頷き、目を閉じると、

「いい子だ。」

そう言って、キスをひとつ落としてくれた。

瞬間。
ハレルヤ君の気配が無くなる。
私は、言われた通り、耳も塞ぎ、その場にしゃがみこんだ。

耳を塞いでいても、聞こえてくる、たくさんの断末魔。
きっと、今のハレルヤ君は、喧嘩番長なんだ。
それを、見せたくないから、・・・私に、目と耳を封じさせたんだ・・・


しばらくすると、シーーン、となった。
ハレルヤ君が私の手を優しく包み、耳を解放してくれる。

「目は、まだ、つぶってろ。
 ほら、立てるか?ゆっくり・・・」

ハレルヤ君の声に合わせて、私はゆっくりと立ち上がり、
ハレルヤ君の歩調に合わせて、ゆっくり歩き出した。

どれくらい歩いたか。

「もう、目、開けていいぞ。」

見えたのは、商店街の入り口付近。
きっと、ハレルヤ君は、喧嘩の痕も見せたくなかったんだろう。
(後でカティちゃんに聞いたら、辺り一面血の海だった、って。
 ハレルヤ君は、まるで鬼のようだった、って、聞いた。)

私は、ハレルヤ君に肩を抱かれたまま、歩を進めた。
コーラサワー君は、カティちゃんに助けられて、後ろから歩いてくる。

川原まで来ると、突然、ハレルヤ君が私から離れ、コーラサワー君とカティちゃんに振り向いた。

「だから!あれ程ッ!注意しろ!っつっただろ!!!!」

握った右手が上がり、コーラサワー君に殴りかかる、かに見えた。

「や、やめっ・・・」

私が、声にならない悲鳴を上げた。
・・・が・・・

ハレルヤ君は、コーラサワー君を、殴らなかった。
殴りたくても、殴れない。
右手が、ぶるぶると震えている。
そのまま、膝をつき、地面を、何度も殴った。

「クソッ、クソッ・・・」

肩が震え・・・まるで、泣いているかのように・・・
そして、まるで、二人に土下座をしているようにも見えて・・・

コーラサワー君も、カティちゃんも、気まずそうに、それを見ていた。

「・・・行けよ。」

地面を見つめたまま、ハレルヤ君が小さく呟く。

「さっさと帰れよ!!」

そう怒鳴られ、二人は、私に目配せして、ハレルヤ君の横を過ぎ去った。
その時。

「・・・悪かったな・・・」

また、ぽつりと、ハレルヤ君が、呟いた。

二人とも、ふっ、と笑い、
コーラサワー君が、

「また明日な!」

と、笑顔で帰って行った。


地面に膝をついたままのハレルヤ君の背中に、そっと手を添わせ、私も、地面に、座り込んだ。

「ハレルヤ君・・・
 ごめんなさい、私・・・
 私が、我儘言って、それで・・・
 ハレルヤ君の言いつけ、守らなくって、
 コーラサワー君にも、カティちゃんにも、迷惑、かけて・・・」

そう、謝罪していた私を、突然、ハレルヤ君が抱き締めた。
きつく、きつく。

「悪いのは、俺だ。
 俺が、喧嘩ばっかしてっから。
 怖い思いさせて、・・悪かった・・・」

腕を解くと、私の顔を覗き込み、

「・・・痛かったよな、こんな・・・腫れちまって・・・」

まるで、泣きそうな顔をして、私の頬をなぞる。
そんなハレルヤ君の表情に、私の方が泣きそうになる。

ハレルヤ君は立ち上がると、私に手を差し伸べ、立たせてくれた。
ズボンについた砂を払うと、私の足の砂も、優しく払ってくれる。

「なあ、俺ん家、すぐそこなんだ。
 コレ、冷やした方がいいぜ。
 うちに、寄れよ。」

頬を触られ、少し、ちくん、とする。
私は、こくり、と頷くと、ハレルヤ君に手を引かれ、案内された。


着いた先は、綺麗なアパート。
その一室が、ハレルヤ君のお家だった。
(ハレルヤ君は、一人暮らしらしい。)

「お、お邪魔します・・・」

中に入ると、案外綺麗に掃除されていて、驚いた。
示されたソファに座り、落ち着かず、キョロキョロと辺りを見回す。
装飾品は殆ど無くて、シンプルな、男性の部屋!て感じ。

「・・・なに、見てんだよ・・・」

ハレルヤ君は、柔らかいタオルに包んだ保冷剤と、濡らしたタオルを持って、キッチンからやって来た。
濡れタオルで、口からの血を丁寧に拭いてくれるハレルヤ君。
私は保冷剤の方を受け取り、熱を持った頬に当てながら、

「や、・・綺麗にしてるな、って。
 私の部屋なんかより、ずっと綺麗だよ!」

そう応えると、一瞬、きょとん、として、

「ハハハハハ!」

ハスキーな声で、笑い声を上げた。
私の、好きな笑い方だ。
つい、頬が緩んでしまう。

「まさか、委員長様の部屋が、喧嘩番長の部屋より汚いとはな!」

「き、汚いとまでは言ってないもん!
 ちょっと・・散らかってる、だけで・・・」

「ふーん。
 じゃあ、今度、確かめに行くかな!」

「えっ!じゃあ、掃除しとく!!
 でも・・男の人、入れるの、初めてだから、緊張するなあ・・・」

そう呟く私に、ハレルヤ君は満足そうにニヤリと笑った。

「当然だな!!
 付き合ったのが、俺が初めてなんだから、俺が初めてじゃなきゃ嘘だろ。」

・・・まあ、そうなんだけど。

「じゃあ・・・ハレルヤ君は、ここに、女の人・・・」

私は、想像したくなくて、でも、どうしても確認したくて、恐る恐る、訊いてみた。

ハレルヤ君は、少し意外そうな顔をして、そして、私を抱き締めた。

「バーカ!!
 安心しろ!この部屋には、しか入ったことねーよ。
 なんつーか・・
 そこまで本気で付き合った奴、居なかったし。
 俺のテリトリーに、入れる気もしなかったし。
 ・・・だから・・・
 おめーは特別なんだぜ?。」

そう言うと、チュッ、と、軽くついばむようにキスをされた。
そして、

「ちょっと待ってろ。」

奥の部屋へ姿を消した。

私は、保冷剤で冷えた頬を改めてさすりながら、
自分が特別なんだ、というのが嬉しくて、また、頬を染めた。

しばらくすると、ハレルヤ君が、飲み物と、紙袋を持って、やって来た。

「腫れは?・・・引いたか?」

確認するように、私の頬を優しくさする。
その表情が切なくて、胸がちくん、となった。

「もう・・大丈夫と思う。」

私が笑うと、そうか、と、ハレルヤ君も、安心したようだった。
グラスに注いで貰ったジュースを飲みながら、ハレルヤ君を見ていたら・・・

紙袋から出てきたのは、なんと、女性物の、ワンピースとミュール!

「こ、これ・・?」

驚く私に、

「おめーにだよ。
 ほんとは、夏休みにプレゼントするつもりだったんだけどよ。
 ・・・制服が・・そんなんじゃ、帰れねーだろ。」

申し訳無さそうに応えるハレルヤ君。
破かれたブラウスと、その上から羽織っているハレルヤ君の学生服のことを、言っているのだろう。

私は、戸惑いながらも、そのふたつを手に取った。
手触りから、とても上質な物だと分かる。
シフォンの淡いオレンジのワンピースと、エナメルの白とオレンジのミュール。

奥の寝室を借りて、そこで着替えた。
(ちなみに、寝室も、とても綺麗にしてあった。恐るべし喧嘩番長!)
寝室に置いてある姿見で確認すると、ワンピースの可愛さから、凄くテンションがあがっちゃう!!

勢い良く寝室から飛び出すと、我知らず、ハレルヤ君に抱き付いてた。

「っわ?!」

驚いた声なんて、珍しい。
更に愛しく想いながら、

「ありがとう!ハレルヤ君!!」

お礼を述べると、ハレルヤ君は私の姿を見て、ニヤリと笑い、

「似合うじゃねーか。
 見立て通りだな。」

と、満足そう。

私たちは暫く、ソファーでくっついて、ジュースを飲んだりまったりしていたんだけど・・・


「なぁ。」

ハレルヤ君が、切り出した。

「なんで、商店街なんかに、行ったんだ?」

びくり!と肩を揺らす私。
・・・怒られる・・?!

黙っている私に、ハレルヤ君は、溜め息を、ひとつ。

「はぁ・・・。
 マネキンだけじゃなくって、
 にも、ちゃんと話しておくべきだったな・・・
 ・・・奴らに、言われただろ?
 「ハレルヤの女」だ、って。
 他校のグループからは、俺の彼女ってだけで、狙われんだよ、おめーは。
 特に、あの商店街の裏は、一番タチの悪いグループの溜まり場だからよ、
 商店街には絶対行くな、って、マネキンに念を押しといたんだ。
 だから・・・なんで、よりによって、商店街なんかに、って・・思ってよ・・・」

その言葉に、私は、愕然とした。
全然知らなかった・・・
ちゃんと、ハレルヤ君の言いつけ、守るべきだったのに、私・・・

私は無言で鞄を開けると、押し潰されてぐちゃぐちゃになった小さな箱を取り出した。

「こ、これ・・・」

震える手でハレルヤ君に差し出すと、不思議そうな顔をしながらも、受け取ってくれて、開封した。

「っ!・・・これ、・・まさか・・・」

中のピアスは無事だったみたいで、それを見たハレルヤ君の表情が、驚きに変わる。

「カティちゃんからは、明日、ハレルヤ君と一緒に買いに行けばいい、って、言われたんだけど。
 私、どうしても、サプライズでプレゼントしたくて。
 ハレルヤ君を、喜ばせたくて、・・それで・・・
 カティちゃんと、コーラサワー君に、無理言って、買いに行ったの・・・
 ・・・ハレルヤ君の言いつけ破って、・・ごめんなさい・・・」

涙目で謝る私を、突然、ハレルヤ君は抱き締めた。

「・・・俺の、・・・為、かよ・・・」

小さく呟くハレルヤ君の掠れ声と、
私を抱く腕の震えが、とても切なくて、
誘われるように、私は、「ごめんなさい」と、何度も謝りながら、泣きじゃくった。


私が落ち着いた頃にはすっかり夜になっていて、
外に出ると、月と、星が、瞬いていた。

ハレルヤ君は、送ってくれると、親に挨拶する!と言い出し、
出てきたお母さんに、ふかぶかとお辞儀をして、丁寧な言葉で挨拶していた。

お母さんは、ハレルヤ君を気に入ったみたいで、
(礼儀正しいのと、言葉遣いが丁寧なのと、イケメンなのと、頭が良いので。)
(最近、私の成績が急に上がったのは、ハレルヤ君に教えて貰っているからなのだ。)
「まさか、この子に彼氏が出来るなんてね〜!」
と、とても嬉しそうだ。

お付き合いを認めて貰って、私もハレルヤ君も、一安心。

「じゃあな、。また明日。」

「うん。明日。気を付けてね。」

走り去るハレルヤ君の姿が見えなくなるまで、私は、ずっと見送っていた。
ハレルヤ君の耳には、私がプレゼントした、シルバーのピアスが、きらきらと輝いていた。


☆☆☆


な、長かった!!!
短編のつもりが、全然短くなかった!!!
ほんと読みづらくてすみません!!
しかも、話、続くつもりですし!!!

なんか、アレですね。
ベタですね。すみません。
でも、こーゆーベタなのが似合いそうじゃないですか?喧嘩番長ハレルヤ君。

コーラサワー&カティ夫婦にも出演して貰いました。
ハレルヤ&ヒロインちゃんだけじゃ、話の幅が広がらないかな、と思いまして。
このふたりが出たことで、学園生活もよりリアルになったんじゃないかな!
次回は、刹那も出したいな、と思っております☆

↓宜しければ感想などどうぞ♪


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