月と星と 6
数ヵ月後・・・
歳三も、近くの剣道場の師範として勤めに出るようになり、
ふたりの生活も順調にいっていた。
夜。
歳三が勤めから帰ると・・・
は帰宅していたが、部屋の明かりが点いていない。
「・・・・・・?」
歳三も明かりは点けずに、そのまま室内へと上がった。
月明かりで、部屋の内は案外明るく、の表情も見てとれた。
どうやら、泣いていたようである。
「そっち、行っていいか?」
歳三がブッキラボウに言えば、
は、こくん、と頷いた。
よっこらせ、との傍に座り、の肩を抱くと、
自身の肩に引き寄せた。
「・・どした・・?」
「・・・んーん・・」
は目を伏せ、首を横に振り、何も言わない。
ー・・本当は、仕事で嫌な事があったのだ。
だが、はそれを言わない。
「・・そか・・・」
歳三は追従せず、ただ黙っての髪を撫でていた。
「しっかし・・・
武将の本とかが多いな、は。
伊達・・真田・・お!織田信長。」
「そーいえば・・土方さん、
織田信長の生まれ変わりなんだ、って、言ってたそうですね。」
「!!なんで知ってやがる・・そんなコト・・・」
「くすくす・・有名ですよ。」
ふっと、歳三は笑いながら、
「俺好きだもんな、は。ふふっ・・・
どこがそんなに好きなんだ?」
「どこ、って・・・
・・・頭イイところとか・・・
顔がステキなところとか・・・
生き方がカッコイイところとか・・・
意外と風流なところとか・・・」
「意外と、ってなんだよ。心外だな。」
「それと・・・お逢いして思ったのが・・・
声がステキだなぁとか、
背中が広いなぁとか・・・」
「あーもー分かった分かった!!
ったく、臆面もなくンな事言うなよ、ハズカシィ。」
歳三は照れて赤くなった頬を見せまいと、そっぽを向いた。
ぽそっ
「ー・・・お前ェに逢う為に、
俺は生きてココに来たのかもな・・・」
「えっ?」
「何でもねぇよ。」
ーー・・・運命、ってやつか・・・
歳三は、を抱く腕に力を入れた。
ふと窓の外に目をやると、
そこには、
輝く月と星とが瞬いていた。
おしまい。
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