記憶
「京介さん!!」
街中で突然、少女が、僕を見るなり駆け寄って来た。
その子の顔を、僕は未だに忘れる事が出来ない、あれはまだ大戦中の……
そう、あの子は確かに大戦中に、敵軍に撃たれて死んだ……どうして、ここに…生きてる??
「君は…ナゼ……」
「私、京介さんに逢いたくて……
前に、とても残念なお別れの仕方だったから。だから……」
その言葉が、僕の胸に突き刺さる。
僕がちゃんと守ってあげれたら…そうしたら、もっと……
「違うの。」
少女は、首を横に振りながら、僕の思考を読んだように切り返した。
「私、京介さんがいてくれたから、あんな時代でも生きていられたと思うんです。
本当に、感謝してるの。
だから…そんな、哀しそうな顔、しないで。」
少女は、ちょっと悲哀を含めた笑顔を向け、僕の頬に右手を添えた。
その仕草が、前の君と本当に同じで……あの頃の記憶が僕の脳裏にも甦る。
「君は…前の記憶が、あるんだね…つらくは、無い?」
「ツライ??
…うぅ〜ん、確かに、あの頃は大変な時だったから、怖い記憶もあるけれど…
でも、それよりも、京介さんを覚えてる事の方が大事だから。
こうやって、再び京介さんに出逢えて、とても幸せです。」
少女は、にっこりと笑った。さっきの悲哀は、もう含んでいない。
ふと、僕はある懸念がよぎった。
前世の記憶があるのなら、今世の記憶は?
前世の人格が残ってるのなら、今世の人格は??
ツライ記憶も確かにあるのだから、前の記憶など、無くとも……
「君、名前は?」
「です。京介さん。」
僕は心臓を鷲掴みにされたように息を呑み込んだ。
前の名前と全く同じだ。
今の本名だろうか?それとも……
「今も、昔も、同じ名前なんですよ。なんだかビックリしますよね。」
えへへ、と、は照れたように笑った。
「、君は…前の記憶が邪魔をして、今の記憶や人格に影響を及ぼしかねない。
前の記憶は…忘れた方が良いよ。」
僕はそう言って、の頭に手をやろうとした。
すると、その手を、がしっかりと握った。
「?!」
「ダメですよ、京介さん!!」
「ダメ?何故?」
「前の記憶も全部、今の私なの。
お願い、自分から一人になろうとしないで。
今度こそ、一緒に生かせて…お願い…」
うっすらと涙さえ浮かべている。
僕の眼には、うす汚れた和服を着た、以前のが、ワンピースを着た現在のに重なって見えた。
これが、君の、…の望みなのか……
それならば…
「…分かった。記憶はそのままにしておくよ。
勝手な事だった、悪かったね。」
「いいえ。京介さんは、私の事を想って下さっていて…嬉しいです…」
俯きながら、頬を染める。
あぁ、なんて、愛おしい。
このまま連れて帰りたい衝動にかられつつも、平静を装う。
「、これからはいつでも逢えるよ。
ココロで僕を呼んでくれたら、いつでも飛んでくるから。」
そう、文字通り、空を飛んで、ね…
は少し驚いたような顔の後、とびっきりの笑顔を僕に見せてくれた。
これからは、一緒に生きていこう。
命の許す限り……
おしまい。
初!兵部少佐ドリー夢。。。なんだか照れますね。
せっかく、戦争体験のある少佐なので、そういうお話を絡ませたくて書きました☆
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