お守り




それは、まだ 日本が諸外国と戦争をしていた時のお話・・・


・・・」

兵部がの肩を引き寄せた。

滅多に逢えない中、どうにかふたり、時間を割いて、
しかも、人目を忍んで、こうやって貴重な時間を過ごしていた。

戦時下の今、男女がふたりきりで逢うのは、禁止されているのだ。


、これ・・・」

兵部は、自分の軍服のマフラーの端を引きちぎると、の掌の中に押し込むように握らせた。

「これ、お守り・・・」

ふっ、と兵部が微笑むと、も笑い返したが、
その瞳にはキラリと光る涙がうっすらと溜まっていた。


これは戦争なのだから、
もしかしたら明日・・・
いや、この瞬間にでも、
死が訪れるかも知れない・・・・

それでも。

それでも、ふたりは こうして生きていた。

儚い希望に 祈りを込めて・・・


「京介さん・・・ありがとうございます・・・」

は、貰ったマフラーの端を、ぎゅっと握り締め、
涙がこぼれ落ちないよう必死に笑顔を作り・・・

「ご武運を・・・どうか・・・」

兵部は、そんなの頬に右手を添え、
こぼれ落ちようとする涙を親指ですくった。


「コラァ!!!!そこで何をしている!!!!」

見回り隊の男性に見付かったらしい。


「!!! 、こっち!!!」

兵部はの手を離さないように注意しながら、
男性の声とは反対の方へ駆け出した。


ーー・・・誰にも咎められず、逢えるようになればーー・・・

兵部の頭の隅に、そう考えがかすめたが、
ありえないな、と苦笑するしかなかった・・・・



ーー現代ーー

兵部は、はるか昔の出来事を思い出していた。

隣りでスヤスヤと安らかな寝息を立てている

その幸せそうな寝顔を、今度は、どうあっても必ず守り抜く・・・

そう固く決意する兵部であった・・・

おしまい。


やっぱり、戦争体験のある少佐なので、それ絡みのお話になってしまいました☆
苦手な方、本当にごめんなさい!!!でも、こういう時代は、本当にあったのです。。。

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