チョコレート



厨房から漂う、甘いチョコレートの香りに誘われ、
は厨房の扉を開いた。

中では、セバスチャンがチョコレートケーキを仕上げようとしていた。

「!
様。
いかがいたしましたか?」

「あっ・・ご、ごめんなさい。
あまりにも、良い香りだったもので・・・」

「ふふっ
あわてん坊ですね。
ほら、もう出来上がりましたよ。
坊ちゃんにお出ししてから、様にもお分けしましょうね。

そうだ、天気も良いことですし、
ガーデンテーブルでお待ち頂けますか?
すぐにお持ちしますよ。」

セバスチャンがにっこりとへ微笑むと、
は恥ずかしくなり、庭の方へと逃げるように向かった。



庭では、セバスチャンの世話した薔薇が咲き誇っている。
がぼんやりと花々を眺めていると、声がした。

「お待たせ致しました、様。
本日の、チョコレートケーキでございます。」

「うわあ、美味しそう♪」

目を輝かせながら、幸せそうに頬張る
それを嬉しそうに見つめるセバスチャン。

「!
・・・様、お口の端に、チョコレートが・・・」

手持ちのナフキンで拭こうとしたセバスチャンだが、
ふと思い立ち・・

ぺろり。

素早く顔を近づけ、なんと自身の舌で舐め取るという大胆な行動に出た。

「!!!!

セ・・
セバスチャンさんっ!!!」

真っ赤になって、唇を覆う
その目には、うっすら涙も・・・


・・おや・・
・・・悪戯が過ぎましたか・・・

「・・・申し訳ありません、様。
あまりにも・・・可愛らしすぎて、つい・・・」

まったく悪びれた風もなく、口先でだけ謝るセバスチャンであった。


おしまい。


******

子悪魔セバスチャン発動。


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