3まちぶせ


「みっやった、さんっ!」

ロードワーク中。
後ろから、声を掛けられた。
女の声だ。

・・・また、うっとおしぃファンだったら面倒だな・・・

そう思いながら、走る足を止め、振り返った。
見ると、だった。

「あぁ、アンタか。」

「すみません、ロードワーク中に。
 そこで見かけたから、追いかけてきちゃいました。」

「・・・そーいや・・・アンタ、今日は練習してねーんだな。」

にっこりと笑うは、いつものジャージ姿、空手着姿と違って、
裾のふわりと広がったワンピースを着ていた。
どこにでもいる、普通の可愛い女の子だ。

「え?
 あぁ、今日はですね、映画を観に行ってたんです。
 部活はちゃんとしましたよ!
 でも、試合も近いから、息抜きしようと思って。」

ほら、と、パンフレットをバッグから取り出して表紙を見せてくれた。
ジャッキー・チェンのカンフー映画だ。
よっぽど好きなんだな、コイツ。

「ふ〜ん。デートかい。」

もしそうならイヤだな、なんて思いながら、訊いてみた。

「まさか!一人ですよ。」

がぶんぶんと首を振る。

「・・・一人でカンフー映画とは・・・」

オレはちょっと安心しつつも、
一人で映画館に行き、カンフー映画を観る女の子を想像して苦笑した。

「あ!今、笑いましたね!
 だって・・・、しょうがないじゃないですか。
 こんなカンフー映画、一緒に観に行ってくれる人なんて居ないですもん!」

「誰も?」

「えぇ、誰も。」

「・・・・」

「?
 なんですか?」

「なぁ、今度、オレが一緒に行ってやるよ。」

我ながら、高飛車な言い方だ。
だが、こんな態度でも、は気にしてないみたいだった。

「ほ、ほんと?!
 ほんとに一緒に行ってくれますか?!」

意外にもかなり喰いついて来た。

「あ、あぁ。
 試合の無い日になら。」

やったー!と大きくジャンプして喜ぶ
なんか、可愛いな、と、思わず口元が緩んだ。



それから数日後。
また、同じ場所でと出会った。
出会った、と言うより、待ち伏せされた、と言った方がいい。

「あっ、宮田さん!」

は、ロード途中のベンチに座ってオレを待っていたみたいだ。
今日もジャージ姿ではなく、制服姿だ。

「よう、待ち伏せか。」

「!なにそれ、違いますよ!ただ・・・待ってただけですよ、宮田さんを。」

「それを待ち伏せって言うんだろ。」

「もう。いじわるですね・・・
 あの・・・観たい映画があるんです!」

オレの憎まれ口にもめげず、は鞄からチラシを取り出した。

「これ、リバイバルなんですけど。どうですか・・・?」

オレに対して少し心苦しいと思っているのだろうか、
おずおずと上目遣いに伺う

チラシには、ブルース・リーが載ってる。
どんだけ好きなんだ、コイツは。

オレは苦笑しながらも、

「OK。
 スケジュール見て、行ける日を教えるよ。」

快諾すると、は嬉しそうに、

「ありがとうございます!」

と笑った。


が笑うと、オレも幸せな気分になる。
何故だろう・・・


「どういたしまして。」

オレはに背を向けると、良い気分のまま、軽快にロードワークへと戻った。



☆☆☆

宮田君とデートの約束♪
タイトル等は勿論、木村vs間柴編から。


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