3散歩とオレ


「はい、今日はこれで終わりです。お疲れサマでしたっ。」
が、ぱたん、とテキストを閉じた。

いつもの馴染みの店で、もう、何度目かになるの授業を受けていたオレ。

「なあなあ!!
 この後さあ、はなんか用事あんの?」
オレは、の顔を覗き込むように問いかける。

「この後ですか?いえ、特になにも・・・」

「じゃ、じゃあさ!
 ちょっと一緒に散歩でもしねーか?」

「え、お散歩ですか?
 えぇ、いいですよ。楽しそうですね!」
にっこり笑う

の応えを聞いて、内心、ガッツポーズをする。
そして、オレたちの後ろのテーブルに居る3人・・・
フーゴ、ミスタ、アバッキオに、にやり、と笑みを投げる。



数時間前・・・


「どーやったらさーー、ともっと仲良くなれるかなあ?」
最近、オレの頭の中は、のことでいっぱいだった。

「フツーに、デートに誘えばいいじゃないですか?」
と、フーゴ。

デートってなんだよ。なにすればいーんだよ。

そんなオレの疑問に気付いたのか、
「その辺を散歩でもすりゃいーんじゃねーのか。
 そしたら、何が好きで、どんなヤツなのか、分かるんじゃねーの?」
と、アバッキオ。

「おおーーッッ!!
 さ、散歩ねッッ!!!」
オレは忘れないように、復唱する。

「そん時にさ、さりげなーく、手とか繋げば?」
と、ミスタ。

「ええええッッッ!!!!
 て・・手を?!!・・つ、繋いでも・・いーのかッッ??!」
オレはビビって、すげえ動揺しちまった。

「いーかどーかは、次第だけどな。
 まあ、繋いでみて、嫌がられたら、離せばいーじゃんか。」
と、ちょっと無責任なミスタ。
オレはヤだぞ、それで嫌われたらッッ!!!

でも・・・手を繋ぐ、かあ・・・
想像してみたら、すげえいいかも!って思った。



そんなことがあったから、オレは、を散歩に誘ったんだ。

オレは早速立ち上がると、
勇気を出して、の前へ手を差し伸べた。

「・・い、行こうぜ!」

すげえ緊張して、声も手も震えてる。
かっこ悪りぃ、オレ・・・

でも、このやり方なら、
強引に手を繋ぐよりもいいだろう、と、考えたんだ。

はきょとん、としてたが、
テキストをしまった鞄を持つと、オレの手を握った。
そして、
「はい。行きましょう。」
と、とびっきりの笑顔を見せてくれた。

すっげえ胸がどきどきするし、
顔は真っ赤なのが自分でも分かる。

思わず、握った手の力をぎゅっとこめた。


街へ出ると、今までとなんら変わらない風景のはずなのに、
すげえ違った風に見える。
と一緒だからかな。

オレは、思わずへ微笑んだ。
すると、もオレに笑ってくれる。

すげーいい!!
これ、すげーいいよッッ!!!

オレは嬉しくって、スキップしそうな勢いだった。


「な、なあ、何処行きたい?」

「うーん・・・何処でもいいですよ、ナランチャが一緒なら。」
は、ちょっと困ったように言った。
「・・・実は、この街のこと、あんまりよく知らないんです・・・」
恥ずかしそうに、俯いてそう呟いた。

なーんだ、そっか!
じゃあ、オレが案内すればいーんだな!!
・・女が好きそうな所と言えば・・・

「なあ、花とか、好きか?」

「えぇ。花は好きです。」

よしっ、いつも通る、角の花屋とかいーかもな!!

オレはいつも歩く道を、と二人で歩いた。
いつもは一人か、それかメンバーと歩く道を、
と歩くってだけで、すげー気持ちいい!!


花屋に着くと、は目を輝かせた。

「うわぁ、綺麗っ!!
 やっぱり、日本と花の種類とかも微妙に違うんですねっ。」
にこにこしながら、は花を見て回った。

その中で、が目を留めた花があった。
オレンジ色の、・・・名前なんか知らねーけど、可愛いらしい花。

、コレが好きなのか?」
そっと訊いてみた。

「はい。可愛いらしくって、綺麗で・・・」
ふふっ、と微笑む

オレは店員を呼ぶと、店にあるだけの、そのオレンジ色の花を、
ぜーんぶ買い占めた。
それと、他にもテキトーに見繕って貰って、大きな花束を作って貰った。
出来たばかりの綺麗な花束を、オレはへ差し出した。

「っ!
 こんなに、たくさん・・・っ」
が、目を大きく見開く。

「オレからの・・感謝の気持ち。」
オレはせいいっぱいの勇気で、声を絞り出した。

「・・・ありがとうございます・・・」
は、少し目を潤ませながら、大きな花束を両手で抱きかかえた。


オレは、照れながらも、の嬉しそうな顔を見て、しあわせな気分に浸った。
と、なんかちょっとだけ、仲良くなれた、そんな気がした。




TO BE CONTINUED


☆☆☆

ナランチャには花が似合うと思う。

↓宜しければ感想などどうぞ♪


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