4オレンジ色の花束とオレ


が、オレンジ色の大きな花束を抱いて、オレの隣りを歩いている。
ただそれだけなのに、すげーいい気分だ。

「なあ、だいぶ歩いたから、疲れたんじゃあねーか?
 ほら、あそこの店で、何か飲もーぜ?」
オレはそう言うと、の手を引き、女が好きそーな、こじゃれたレストランへ入った。


注文を済ますと、外のテーブルに着く。
すぐに、注文していたオレンジジュースを2つ、ウエイターが持って来た。


「ナランチャは、色んなお店を知ってるんですね。」
一口、ジュースを含むと、が微笑みながら話してきた。

「そっ・・そーでもねーよ。
 アバッキオとかミスタのほうが、お洒落な店とか知ってるだろーしさ。
 それに、フーゴのほうが頭いいし。
 ブチャラティなんて、この街のヒーローなんだぜ。
 ・・・それに比べたら、オレなんて・・・頭悪りぃしさ・・・」
言わなくてもいーことばっか言ってる、カッコ悪いオレ・・・
なんか、自分で言っててヘコんできた・・・

「ナランチャ・・・」
突然、テーブルに置いてたオレの右手に、が、自分の左手を重ねてきた。
どきん!と、心臓が跳ねる。

「ナランチャは、ナランチャです。
 人には無い、いいとこ、いっぱい持ってます、ナランチャは。
 優しいし、明るいし、元気だし、努力家です。
 私は、そーゆーナランチャが・・・好きですよ。」
少し頬を染めて、にっこりと笑う

いっ、今ッッ!!!
す、好き、って言ったよな!!!
これって、どう受け取ったらいーんだ??!!
誰か教えてくれよーーーッッッ!!!

オレの頭の中は、パニック状態。
血が昇って真っ赤になった顔を冷やすように、
オレは一気にオレンジジュースを飲み干した。


せっかく、ほわんほわんとした、いー雰囲気だったのに。。。


「あ?おめーはブチャラティんとこの・・・」
ドスのきいた声に振り返ると、
明らかに柄の悪いおっさんがこっちを睨んでる。
なんだコイツ。

「こないだ、ブチャラティに世話になってなあ。
 さすがにアイツには逆らえねーが・・・
 チビのおめえならよおおーー」

・・・なんか、すげーナメられてる、オレ。

男は、オレの胸倉を掴むと、イキナリ殴りかかってきやがった。
オレは素早く、ポケットからナイフを出すと、
その拳に切りつけてやった。

「!!痛てえーー!!!」
右手から血を流しつつ、のたうち回る男。

なんだ、すげえ弱えーじゃねーか。
話にもなんねー。

だが、さすがにこのままここに居座るのはマズイな、と思い、
を立たせた。
「悪りぃ、行くぜ、。」

一瞬、その男から目を離したのがいけなかった。

男は、の腕を掴むと、隠し持っていたナイフをの首につきつけた。
「この女がどーなってもいーのかッッ!!」

が、怯えた顔をした。
・・・そんな顔、絶対させたくなかったのに・・・

オレは、カーッと頭に血が昇り、
迷わずエアロスミスを発動させた。

に・・・触るなああァァァーーーーッッッッ!!!!!」

オレの怒声とともに、エアロスミスから弾丸が連射される。

「ボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラ
 ボラーレ・ヴィーア!!!!!!!!!」

つい、いつもより多めに撃っちまった。
一瞬、殺しちまったか?と不安がよぎったが、
腕や脚しか狙ってなかったから、ちゃんと生きてるようだ。

だが、そんなことよりも、のほうがオレにとっては心配だった。

スタンドは見えないにしても、
自分の目の前で人が撃たれて、いっぱい血を流しているんだ。
こんな光景、オレたちギャングと関わりの無い一般人のにとっては、
かなりショックなことだろう。

その証拠に、はくちびるを震わせ、青ざめた顔をしている。
脚もガクガクしてて、今にも倒れちまいそうだ。

オレは急いでに駆け寄ると、彼女を抱きかかえるようにして、その場を離れた。


の家までの帰り道、オレたちは一言も喋らなかった。
オレは、胸が苦しくて、どうしていいか分かんなかった。
ブチャラティや、アバッキオに、どうすればいいか、訊きたかった。
でも、オレが決断するしかねーんだ・・・


のアパートの前に着くと、オレは、重たい口を開いた。

「あの・・・・・、その・・悪かった。危ない目に、遭わせちまって・・・」

「うぅん、大丈夫。」
無理に笑うの笑顔が痛々しい。

「なあ、。せっかく仲良くなれたけどさ・・・
 やっぱ良くないよ。
 お前は、オレに関わらねーほうがいい。」
さっきっから考えてたことを、ようやく口に出した。

「え・・・?」
は、信じられない、といった顔でオレを見つめる。

そりゃあ、オレだってヤだ。
とずっと一緒に居たい。
もっと仲良くなりてえ。

・・・でも、ダメなんだ・・・
だって・・・オレは・・・

「オレは・・・オレたちは、ギャングだ。
 みてーな普通の人が、関わっちゃいけねーんだよ。
 ごめんな。フーゴが無理に連れて来ちまったせいでよ・・・
 アルバイト・・・普通の生徒が見付かるといいな。」

オレは、無理矢理、に背を向けて、その場を去ろうとした。

ぐいっ!!

が、オレの腕を掴んで、引き止める。
「ナランチャ、私っ・・・」

「・・・離せ・・・」
搾り出した声が、震える。
それでも、離そうとしないの細い指。

「ッ、離せって言ってんだろッッ!!」
オレは、潤む目でを睨みつけた。
の、涙が今にもこぼれそうな瞳とぶつかる。

「オレなんかと関わってると、さっきみてーな事がいっつも起こるんだよッ!!
 そんな目に遭わせたくねーんだッ!!」
悪いとは思いつつ、めいっぱい力を込めて、の細腕を振り払うと、
あんなことがあったにも関わらず、が健気に抱えていたオレンジ色の花束を、
オレはひったくり、地面に叩きつけ、脚で踏みつけた。

「っ!!」
とうとう、の瞳から涙がこぼれる。

オレは、もう、にかけてやる言葉も見付からず、
ただ黙って、背を向け、そして、歩き出した。
への想いを振り切るように。



TO BE CONTINUED


☆☆☆

なんか哀しいことに・・・

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