5覚悟とオレ


「おい、ナランチャ。聞いているのか?」
ブチャラティが少しイラついた声でオレに話しかけた。

ここは、いつもの店。
少し遅めのランチを摂りながら、メンバー全員が揃って、どーでもいい話をしてた。
ほんとーに、どーでもいー事だったから、オレは全然聞いてなかった。
だって、そんな事より、オレの頭の中でいっぱいなのは・・・

「なあ・・・オレ、間違ってねえよな・・?
 アレで、正しかったんだよな・・・?
 なあ、ブチャラティ・・・どう思う?」
すがるような目でブチャラティを見ると、
彼は、はぁ、と、呆れたような顔をして、溜め息を吐いた。
「またその話か、ナランチャ・・・」

「また、って・・・
 オレにとっては、大事なことなんだよッッ!!」

「あぁ、分かってる。分かってるさ。
 お前は立派な決断をしたんだ。
 間違っていない。」
興奮したオレを鎮めるように、落ち着いた声で話すブチャラティ。

「そう・・だよな・・・
 やっぱ、オレたちみたいなギャングとは、
 は関わるべきじゃねーよな。
 ・・・分かってるんだ、そんなこと・・・
 だけど・・だけどさあ・・・
 他に、方法は無かったのかな・・・
 オレ・・・」
オレは、持っていたフォークを、カラン、とテーブルへ投げた。
そして、両手で頭を抱える。

「オレ、すげえ後悔してる・・・
 オレ、もっとと仲良くなりたかったよ・・・
 ・・・オレ・・・」
それ以上は、言葉が出なかった。
出るのは、涙と、嗚咽だけ。

「お前は立派だ、ナランチャ。」
ブチャラティが褒めてくれる。

「すみません、ナランチャ。
 僕がを連れて来なければ・・・」
隣りに座っていたフーゴが、オレの背をぽんぽん、と、優しく叩いてくれる。
オレは、フーゴに返す言葉も出せず、ただ、首を横に振ることしか出来なかった。

ミスタもアバッキオも、食事の手を止めて、オレを見守っていてくれた。

このチームで、本当に良かった、と思った。
オレは、哀しさと、有り難さの混じった涙を、ただひたすら流した。


「あの・・・こんにちは・・・」

その声に、オレはハッとなった。
一番聞きたかった声・・・の声だ。

オレは、溢れる涙を拭いもせず、泣きはらした顔を上げ、
店の入り口を見た。
そこには、昨日、もう関わるな、と伝えたハズのが立っていた。
胸には、あのオレンジ色の花をブローチみてーに挿して。

「・・・・・・
 なんで・・・」
オレは、思わず立ち上がる。

「私、・・・ナランチャともう会えないなんて、そんなのイヤなんです。」
今にも泣き出しそうな顔をしたは、店の中へ入り、オレたちの傍へと歩み寄った。

「昨日みたいな事は、確かに、怖いです。
 でも、日本からこちらへ来た時に、そんな事、覚悟は出来てました。
 それよりも・・・昨日のような事が起こることよりも、
 ナランチャともう会えないって事のほうが、私にとっては怖い事なんです。」
凄く強い意志を宿した瞳で、オレをしっかりと見据える
そして、オレの隣りに来ると、オレの手をぎゅっ、と握り締めた。

「だから・・・お願いです、ナランチャ。
 関わるな、なんて、言わないで下さい・・・」
お願い、と、小さい声で呟きながら、俯き、
まるで祈るかのように、オレの手を握ったまま、指を顔の前で組んだ。

オレはどうしていーか分からず、ただ呆然と、
を見つめ、そして、
助けを求めるように、ブチャラティ、アバッキオ、ミスタ、フーゴの顔を見回した。

ブチャラティをはじめ、皆、微笑んでいる。
まるで、良かったな、とでも言いたげな顔だ。

・・・いいのかな、これで・・・
確かに、嬉しい申し出だけど・・・
を、怖い目に遭わせるかも知れねーってのに。

そんなオレの考えに気付いてか、
「ナランチャ。
 彼女は、覚悟が出来ている。」
と、ブチャラティがオレの肩を叩いた。

「か、覚悟・・・」
噛み締めるように、その言葉を口に出す。

「お前はどうなんだ、ナランチャ。」

オレの、覚悟・・・

少し考えて、そして、オレは決めた。

「あぁ、出来るぜ、覚悟ってやつ。
 をぜってー護るし、とはこれからも一緒に居る。
 それが、オレの覚悟だ。」

今度は、オレがの手を強く握り締めた。
が顔を上げ、潤んだ瞳でオレを見る。
だが、その顔は、晴れやかな笑顔だ。

「これからさ、いっぱい勉強して、そんで、
 また散歩しよーぜ。
 花、見たり、疲れたらジュース飲んだり、そんで、
 まだ行ってねーとこにも行こうぜ、一緒に。」

「はいっ!」

オレが笑いかけると、も頷きながら、また笑った。


さっきまで、うじうじ悩んでたのが、嘘みてーだ。
そうだ、オレが護ればいーんだ。
そーすりゃ、と一緒に居られる。
ギャングだからなんだとか、もう関係ねえぜ。
好きだから、一緒に居る。
も覚悟して来てくれてんだ。
オレも、ぜってーを護る。


オレはそう強く決意すると、
窓から差し込む午後の日差しに、目を細めた。




TO BE CONTINUED


☆☆☆

しあわせな方向に・・・

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