6素直な気持ちとオレ


「なぁ、アバッキオ。
 告白って、したことある??」

ある日の昼下がり。
いつもの店でたむろってるチームメンバー、アバッキオに質問した。

「は?告白??
 ・・・『おめーが好きだ』、とか、そーゆーやつか?」

「そうそう。ソレ。」

オレの返事を聞くと、アバッキオはとても呆れた顔をした。

「ノーコメントだな。
 なんだ、おめー、まだに言ってないのか?」

「だってさああーーー!!!
 なんて言えばいーんだよッッ??!!」
オレはアバッキオにすがりつく。
・・・なんか、最近こんなんばっかりだな。
情けねーな、オレ・・・

「そんなの簡単じゃねーか!!」
隣りで聞いていたミスタが口を挟む。
「自分の気持ちを素直に伝えればいーんだよ、簡単じゃん!!」

「そー言うけどよおおーー・・・」
オレは、はぁ、と、ひとつ溜め息を吐いた。
「ほら、女は、雰囲気とか、シチュエーションとか、気にするって話じゃあねーか?」

「なら、簡単ですよ。」
今度は、フーゴが口を挟む。
「花束とか、どうですか?定番だと思いますが。」

「花束かぁ・・・
 オレ、最初のデートの時に、花束あげたんだよね。
 その後も、何回か。
 だからさ。もっとインパクトっつーか、そーゆーのが要ると思うんだッッ!!」

皆で、う〜〜〜ん、と、うなる。

「じゃあ、物じゃあなくて、夕陽とか、そーゆー雰囲気とかは?」
と、ミスタ。

「意外と、朝早くの、朝日と朝霧、ってのもイイかもですよ?」
と、フーゴ。

「海を見ながら、つーのもいーんじゃねーか?」
と、アバッキオ。

皆、真剣に考えてくれてる。
すっげー嬉しい。
でも、

「ゴメン・・・
 なんか・・・もっとねーのかな・・・
 こう、ずっと記憶に残るような・・・」

「「「じゃあ、てめーで考えろッッッこのド低脳があああーーーー!!!!!」」」

3人から寄ってたかって、ぼっこぼこに殴られた。

「痛ッてぇーーッッ!!!なにすんだよおおおーーー!!!
 だから、低脳ってゆーなああァァァーーー!!!」
殴られた所をさすりながら、文句を言うと、

「痛いのはてめーの頭だ、ナランチャっっ!!!」
アバッキオが、はぁ、と溜め息を吐いた。
「とにかく、だ。
 好きなら好きって、言えばいーだけじゃあねーか。」

「ナランチャ、おめー。
 もたもたしてっと、他の男に、取られちまうぞ?
 ここはイタリアだ。
 イタリア男が、あんな可愛いを放っておくと思うか?」
ミスタも口出しした。

「えっ・・
 そ、それは、ヤだ・・・」

「あー、そーいえば。
 が通ってる学校は、けっこう頭の良い男が揃ってるらしいですからね。」
フーゴまで、オレを煽るような事を言う。

「う・・・
 あ、頭の良さとか、そんなの全然関係ねえ!!
 を想う気持ちは、誰にも負けねーぜッッ!!!
 ・・よしッ!!
 オレ、今からに、好きだ、って言ってくるぜ!!!!」
オレは、椅子から立ち上がり、握り拳を振り上げて、声高に宣言した。

「「「おぉーーー!!!」」」
パチパチパチパチパチ・・・
3人が、拍手してくれた。
皆も応援してくれてんだ、ぜってーやってやるぜ、オレッッ!!!!



の家へ行く途中、いつもの花屋で、大きめの花束を用意して貰った。


「いつものお嬢さんに、ですかい?」
花屋の主人が、気安く話してくる。
こーゆーのは嫌いじゃねー。

「あぁ。
 なんかさー、いつもとちょっと違う感じで、
 ちょっぴり豪華にしてくんねーか?」

「豪華、ですか・・・
 じゃあ、薔薇とかどうです?
 薔薇を貰って嫌がる女性はいやせんぜ。」

「バラか!そっか!いーね、ソレ!!」
主人に、薔薇が置いてあるコーナーへ案内された。

「お、この色いーな!」
オレが指差したのは、オレンジ色の薔薇。
薔薇にも、オレンジ色があるんだな。
が以前、好きだ、つってた花もオレンジ色だったし、
オレのカラーも(名前も)オレンジだから、ぴったりじゃねー?!

「オレンジ色の薔薇は、【信頼】【絆】【元気になって】、
 という意味があるんですぜ。」

主人の言葉に、へぇ、となるオレ。

「花に意味があるのか・・・
 じゃ、じゃあ、さ・・・
 ・・・その・・・
 す、好きだ、っつー意味とかも、あんの?」
すっげー恥ずかしかったんだけど、聞かずにはいられなかった。

「あぁ、それなら・・・
 こちらの、真紅の薔薇ですね。
 【あなたを愛します】という意味がありますよ。」

・・・あなたを、愛します・・・

心の中で、反復してみる。
なんか、顔が熱くなる。

「うん、それじゃ・・・
 オレンジのと、赤いの、一緒に混ぜること出来る??」

「はい。じゃあ、色合い的に、赤が多めでよろしいですかい?」

「あぁ、色合いは任せるよ。」
オレは、照れ臭さから、顔を背けた。


出来上がった花束を見ると、すげー綺麗だし、インパクトあるッッ!!!
「すっげーー!!!」
オレは思わず感嘆の声を上げた。

「これを貰ったら、あのお嬢さんも喜ばれますよ。
 どうか、成功をお祈りしてますよ、旦那。」
主人は、思わせぶりにウインクした。
くっそ、バレバレかよ。

「あ、あぁ・・」
オレは上手く返せず、素早く支払いを済ませると、店を出た。


あとは・・・
ドルチェだな。

女は、甘いモノに目がねーっつーもんな!
かく言うオレも好きだけどさ。

オレは、行きつけのチョコレートショップに行くと、
2人で食べれる程の、小さめのチョコレートケーキを買った。


よぉし、これで準備万端ッッ!!!

・・・ちょっとは正装して来れば良かったかな?
でも、なんかあんまり気合い入れてもな・・・
普段通りに行ったほうが、オレらしいかもな。


そんなことを考えてると、の家に着いた。

今までに無いぐらい、ドキドキしながら、呼び鈴を押す。
指が震えたくらいだ。

「はーい。」
中から、の声がした。

居たッッ!!!!
や、やべぇっ!
すげー緊張して来た!!!!


少し待つと、ドアを隔てて、不審そうな声がした。
「どなた?
 ・・あっ、ナランチャ!」
ドアの覗き窓からオレの顔を確認すると、
笑顔でドアを開いてくれる
そんなの変化に、オレの方が嬉しくなった。
つまり・・・オレと会って、嬉しい、って思ってくれてる、ってことだから。

、これ・・・」
オレは、まず、大きな薔薇の花束をに差し出した。

「!!
 綺麗・・・
 いつもありがとう、ナランチャ。」
嬉しそうな顔をして、花束を受け取る

あの花屋の主人が言ってたのは本当だな。
薔薇の花束貰って喜ばねぇ女はいねえ。
身を持って知ったぜ。

「どうぞ?」
が、玄関の扉を大きく開け、オレを中へ招く。

の家に入るのは、今日が初めてだ。
一瞬、入ってもいーのかな・・って迷ったけど、
がいーって言ってんだから、いーか!と思って、ドアをくぐった。

「お邪魔しまあす。」
中に入ると、いー匂いがした。
なんだろう・・・
オレの部屋とは全然違う。
これが、女の部屋ってやつかあ。

オレは感心しながら、キョロキョロと周りを見回した。

「やだ、あんまり見ないで下さい、恥ずかしいです。」
後ろから、が照れたように言ってきた。

そーだよな、恥ずかしいよな。
「ごっ、ごめん!!」
オレは身を縮めながら謝った。

「あ、あと、これ・・・」
もうひとつのプレゼント、チョコレートケーキをに手渡す。

「?なあに?
 あ、ケーキね!」
外箱で悟り、はキッチンへと持って行く。

「うわぁ、美味しそう!
 ね、一緒に食べましょう!」
オレへ嬉しそうな顔を向けてそう言うと、皿やナイフを出し、準備を始めた。

オレはリビングにあるソファーに腰掛けると、
緊張をほぐす為に、深呼吸をした。
部屋のいー匂いが鼻腔をくすぐる。

そうしてるうちに、が、
リビングのカウンターへ、花瓶に挿した薔薇の花束を飾り、
ソファー前のローテーブルに、ドルチェとティーを持って来てくれた。

「ケーキに合わせてオレンジティーにしたんだけど、
 オレンジジュースもありますよ。」
オレの好みを理解してくれてて、
いつ、オレが来てもいーよーに、準備してくれてたのかな。
そう想像すると、照れ臭かったし、また、
その気遣いが、すげー嬉しかった。

「グラッツェ。オレンジティーでいいよ。」
オレは熱めのティーカップを受け取ると、
「いただきます!」
と、早速一口含んだ。
オレンジフレーバーが口内に広がる。
その温かさと、香りに、緊張がちょっと和らいだ気がする。

「いただきます、ナランチャ。」
も、早速、チョコレートケーキにフォークを入れた。

「美味しいです!」
嬉しそうな顔をして、頬張る
オレも嬉しくなって、おんなじ様に、ケーキを頬張った。
うん、すげーンまぁ〜いッッ!!!

「くすっ。」
が、オレの顔を見て笑った。

「?」

「ナランチャ、お口の周り、チョコレートがついてますよ?」
の細い人差し指が、オレの口についたチョコレートを拭いすくった。

「っ!!!」
オレは、恥ずかしさのあまり、顔を真っ赤に染めた。
チョコレートを口の周りに、みっともなくつけてたことが、じゃあない。
の指が、オレの口を触ったことが、だ!
フツー、紙ナプキンとかで拭くもんじゃねーか?!
それを・・ゆ、指で・・・ッッ!!!

オレはそれ以上食べることが出来ず、思わずフォークをテーブルに落とした。
頭がパンクしそーだ。

「?
 ナランチャ・・?」
が、不思議そうに見ている。

オレはたまらず、オレの口を拭ったの右手首を掴んだ。

「っ?」

・・・オレ・・・」

オレとの目がぶつかる。
今だ。
今しかねえ。
今、言わねーと、後悔しちまうッッ!!
勇気出せ、オレッッ!!!

「オレ、さ・・・
 が、・・好きなんだ・・・
 出会った時から・・・」

「・・・」
は、ビックリした顔をして、でも、黙ってオレの話を聞いてくれていた。

「オレさ、こんなの初めてだったからさ。
 出会った時に感じた衝撃が、なんなのか、全然分かんなかった。
 これが、人を好きになる、ってゆーの、後から知ったんだ。
 そんで・・・
 に会う度、どんどん好きになってくんだよ。
 好きすぎて、他のやろーなんかにを渡したくねーー、って思って。

 ・・・アレ・・・?
 ちょっと、待て・・・

 そーいや・・に、彼氏が居るのか、オレ、知らねぇ・・・
 ・・あ・・ご、ごめん・・・
 あ、あの・・もし、彼氏が居んなら・・・」
オレは、自分の失敗に恥じ、の手を放し、俯いてしまった。
やべえ、オレ、一人でツっ走っちまった?!!

「ナランチャ。」
優しい声音で、今度はがオレの手を握ってくれる。

「安心して下さい、恋人は、居ません。
 ・・・ねぇ、ナランチャ。
 一番初めに貰った、オレンジ色の花束、覚えてます?
 あれね、花言葉は、【身近な愛】なんです。」

「身近な、愛・・・」
そう呟くと、オレはゆっくり顔を上げ、を見つめた。

「私も、だんだんナランチャに惹かれていって・・・
 あの花束を貰った頃には、私、ナランチャを好きになってたんです・・・」
頬を染めて告白する

『信じられねーッ』、そんな気分!!

「だから・・・凄く嬉しいです。
 あの薔薇の花束も・・・
 私を想ってくれて、選んで下さったんですよね?
 本当にありがとう、ナランチャ。」
微笑んだの目は、潤んでいた。

「あー、ッッ!!
 すっげー好きだッッ!!!」
オレはたまらず、を抱き締めた。

「っ!」
ビックリしたようだったが、オレの腕の中で大人しくしてる
そして、オレの背中へと自分の腕を回す。
オレは嬉しくって、より一層力を込めて、を抱き締めた。

しばらくの間、そうしていたが、やがて、抱き締める腕の力を緩め、
お互いの顔が見えるように少し距離を取り、見つめ合うと、
の瞳にオレが映っているのが見える。
それに吸い寄せられるように、オレたちは顔を近づけ、
すごく自然に、唇を重ねた。
すげー柔らかい唇に、オレは酔いしれた。
甘ったるいチョコレートの味と、オレンジフレーバーが、
との初めてのキスを印象深いものにしてくれた。

きっと、オレは一生忘れないだろう、この幸せな気分を。
そして、も、きっと・・・。



TO BE CONTINUED


☆☆☆

ついにお付き合いすることになりました♪

↓宜しければ感想などどうぞ♪


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