7ダンスとオレ


「ダンスパーティーいい??」
オレは素っ頓狂な声をあげた。

「そうだ、ダンスパーティーだ。
 今度の金曜の夜、近くのバーで開催される。
 俺達は、見周りに行くが・・・
 ナランチャ、お前はを誘ったらどうだ?」
いつもの店。
ブチャラティが、突然、そんな話を振ってきた。

「いや、でもさあ、ブチャラティ。
 皆は仕事で行くんだろ?
 ならさ、オレも一緒に仕事するよッ!」
なんか、オレだけ遊ぶみたいで、ヤだ。
やっぱ、ちゃんと仕事したい。
ブチャラティの為に、皆の為に。

「ナランチャ、気持ちは嬉しいが、
 彼女を喜ばせる、ってのも、立派な男の仕事だ。
 どうしても、ってゆーんなら・・・
 『彼女も喜ばせる』、そして『任務もこなす』。
 両方やる、ってーのはどうだ?
 恋人と一緒なら、不審者が『もし居たとしても』、油断するだろうからな。」

「そっか!両方ね!
 うん、オレやるよ!!」
きゃっほーい!と、両手を挙げ、飛び跳ねて喜ぶオレを見て、
ブチャラティは微笑んだ。


当日。
普段着のままじゃあ会場に入れないっつーんで、
スーツとまではいかないまでも、
ちょっぴりお洒落なカッコーをしてみた。
勿論、上下とも黒だ。

ピンポーン☆

の家へ着き、呼び鈴を鳴らす。
いつもと違うから、ちょっとドキドキした。
は、オレのこのカッコー見て、何て言うかな・・・

「はーい。」

ドアが開くと、可愛くドレスアップしたが出迎えてくれた。
薄いピンク色の、ふわっとしたドレスだ。
それに、いつもよりちょっとだけ濃い目に塗ったリップが目を惹く。
ラメがキラキラしてて綺麗だ。

「うわぁ、!すげー可愛いッ!似合ってるぜ、ソレ!!」
オレは頬を染めながら、照れを隠すように、叫ぶように言った。

「っ、ありがとうございます、ナランチャ。
 ナランチャも、とっても素敵ですよ!」
も、照れながらオレを褒めてくれる。
すげー嬉しい!!


オレたちは、手を繋いで会場のバーへと向かった。

会場へ着くと、チームのメンバーが既に揃っていた。

「おっ、来たな、おふたりサン♪」
ミスタがからかうように迎える。

「二人とも、よく似合ってるじゃあないか。」
ブチャラティが、オレたちを褒めてくれる。
すげー嬉しいッ!!

「ありがとう、ブチャラティ!」

「あ、あの・・
 お招き頂き、ありがとうございますっ!」
オレの横で、かちこちに緊張しながらブチャラティにおじぎする

「そう固くならなくていいですよ、さん。
 普通に楽しんでいけばいいんです。」
こいつと一緒に、ね。と、
オレを指しながらフーゴがに声を掛けた。

「ほら、あそこに飲み物や食べ物もある。
 ・・おい、ナランチャ、なにやってんだ。
 エスコートしてやれよ。」
アバッキオが、オレの背中を、ドン!と押した。

「わぁっ☆」

余りの勢いにこけそうになりながらも、体勢を整え、
、行こうぜ!」
と、改めての手を取った。

オレたちが手を繋いで、会場の奥へ進む姿を、
チームのメンバーが温かく見守ってくれてたなんて、
オレは知らなかった。


テーブルには、ワインにカクテル、ジュースもあったし、
パスタやピッツァ、ドルチェもある。

「なあ、
 ナニ食べる?
 あ、それとも、ドリンクが先がいい?」
オレはを振り返って聞いた。

「じゃあ・・ジュース貰おうかな。」

「えーっ、酒飲まねーのかよー。」
オレは、てっきり、ワインかカクテルを飲むかと思ってたから、
ちょっぴりガッカリした。
が飲んだとこ、見てみてーのに!

「だって・・私、まだ、未成年だから・・・」

は?みせいねん、って何だ??

オレがきょとん、としてると、
「えと、私、お酒、まだ飲んだことなくって・・・」

なーんだ、そっか!!

オレは、アルコール度が低めで、なるべく甘いカクテルを手に取った。

「ほら、
 これならジュースみてーなもんだぜ。
 ちょっぴりでもいーからさ、飲んでみなよ。」

笑顔でグラスを渡すと、は少し不安な顔をして、
でも、ちょっと笑って、少しだけ口をつけた。

「っ!
 美味しいです・・」
ビックリした目でオレを見る

「だろ?!」
えへへ、と笑いながら、オレはワインが注がれてるグラスを手に取った。

「わぁ、ナランチャは、ワインを飲むんですね?」
珍しいモノを見るような目で、オレとグラスを交互に見た。

「え?ワインとか、全然フツーだぜ?」
そう言って、まず香りを楽しみ、そして、味を確かめる為に少しだけ口に含んだ。

「凄いです、ナランチャ!
 テレビで見たことあります!
 確か、そうやって、ワインの味や香りを楽しむんですよね?
 凄いですっ!!」
目をキラキラさせて、が感動していた。

なんだかオレは得意になって、でもちょっと恥ずかしくって、
頬を赤めながら、ワインをまた口にした。

「なあ、何か食べようぜ。
 やっぱピッツァだよな?!
 は何食う?」

「えーっと・・・」

ふたりで食べ物を物色していると・・・

「あら?
 じゃない?」

後ろで、若い女性の声がした。
振り返ると、と同じくらいの年頃の女性が、こっちを見ていた。

「あ・・」
は、少し驚いた顔をしていた。

「・・誰?」
オレが小さい声で、に尋ねる。

「学校の、お友達です。」
オレの問いに答える

「真面目そうな貴女でも、こーゆーところに来るのね?」
の友達は、棘のある言い方をした。
言われたは、少し俯いた。

・・・なんだろう、仲良くないのかな・・?

「そちらの方は?
 まさか、貴女に恋人なんて居ないわよね?」
ふふん、と、またイヤな笑い方をした。

・・・なんか、気にくわねーな、コイツ。

「・・・私の恋人よ。」
友達の言葉に、さすがにムッとなったのか、
は顔を上げ、きっぱりと言い放った。

オレは、と公然の仲なんだな、ってゆーのが、
改めて、すげー嬉しくって、
隣りに居るの肩を抱いた。
そう、まるで、この、の『にせものの』友達に見せ付けるように。

オレの行動を見て、その友達は、少し怯んだみたいだった。
と、そこに、その友達の彼氏なのか、
少し年上の男性が、友達の腰に手を回してきた。

「はぁい、ドリンクは選んだかい?
 ・・・ん?
 !!!
 お、お前は・・・
 組織【パッショーネ】の・・・!!!」
男は、オレの顔を見ると、凄く驚いた顔をした。
オレのこと、知ってんのか。

「えっ、なに、、貴女!!
 そんなチンピラと付き合ってるっていうの?!!」
友達は、信じられない、といった顔で、オレたちを交互に見た。

オレは、に恥ずかしい想いをさせたかも知れない、と、
チクン、と、胸が痛んだ。

すると、は、オレの腰に手をぎゅっと回して、
「彼は私の大事な人なの!
 確かに組織に入ってるけど、チンピラなんかじゃないわ!!
 そんな言い方、やめて!!」
と、凄い剣幕で怒り出した。

・・の怒った顔なんて初めて見たから、オレの方がビックリした。

友達とその彼氏は、の剣幕に圧されて、
逃げるように去って行った。

ほっとしたが・・・
に、ヤな想いさせちまったのが、悔やまれる・・・

「あの・・・・・
 ごめんな。
 オレの所為で、ヤな想い・・・」
言いかけたオレのくちびるを、の人差し指が押さえた。

「気にしないで下さい。
 ナランチャが組織【パッショーネ】の一員だってゆーこと、
 ちゃんと理解したうえで、お付き合いしてるんですから!
 それに・・あの人、なんだかいつも、ちょっぴりイヤな感じなんです。
 今日、ハッキリ言えたから、スッキリしちゃいました。」
にっこりと、誇らしげに笑うにつられて、オレも微笑んだ。

は強いんだな。
 マジすげーよ。」

グラスからワインがこぼれないように注意しながら、
ギュッ!と、を抱き締めた。


「あ!」
聞いたことのある、アップテンポな曲が流れ始める。
のんびりしたやつは踊れそうにねーけど、
これならいけそうだ。

、踊ろうぜ!」
の手からグラスを奪い、
二人分のグラスをテーブルに戻すと、
オレは皆が踊ってる場所までの手を引いた。

は少し戸惑ってたみたいだったが、
オレのリードに合わせて、懸命に踊る。
楽しそうに笑ってるのが、こっちまで嬉しくなっちまう。
くるくる回るに合わせて、
薄ピンク色のドレスの裾がふわりふわりと舞い上がる。
まるで、花が舞ってるみてーで、すげー綺麗だ。

曲が終わると、は肩で息を整えながら、
オレにもたれかかってきた。
すげー可愛い!
オレはドキドキしながら、支えるように、の腰を抱いた。

「ナランチャは凄いです!
 カッコよく踊るから、ドキドキしちゃいました。」
頬を染めながら、がそう言った。
嬉しすぎるッッ!!

こそ・・すげー可愛かったぜ!!」
オレはたまらず、他のやつらに見付からないよう、
素早くの頬にキスをした。

は真っ赤な顔をしたが、
オレを見つめ、にっこりと照れ笑いをした。


ー!
 彼氏と来てたんだね!」
今度は、集団の女子たちが、に声を掛けてきた。

「あ!クラスのお友達です!」
オレに向かって言うと、すぐ、女子たちに向かい、
「皆も来てたんだね!
 彼、私の恋人なんだ♪
 カッコいいでしょっ、ふふっ!」
は、さっきとはうってかわって、
とびきりの笑顔で、オレに腕をからませ、
その友人たちと話している。

オレは、凄く安心した。
さっきのやつは、ほんの一握りで、
には、良い友達もいるみてーだ。

オレみたいな想いは、にはして欲しくなかった。
友達の、裏切りに遭うことだけは・・・


ふと、気付くと、
会場の入り口で、ブチャラティが微笑みながらこっちを見ている。
オレは、ブチャラティに応えるように手を少し挙げた。
すると、ブチャラティも、同じように手を挙げてくれた。

オレの幸せは、ブチャラティによって切り開かれた。
それは、今も変わってないんだな、と、改めて思った。



TO BE CONTINUED


☆☆☆

きっとナランチャの正装ってカッコいいと思う!

↓宜しければ感想などどうぞ♪


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