8学校とオレ


いつもの店で、オレが宿題をせっせとやっつけてると、
隣りに座っていたフーゴがおもむろに口を開いた。

「そろそろ、学校が終わる時間じゃあないですか?」

「?
 そーなの?」
オレは、フーゴの意図が読めず、ノートから目を上げずに何気なく応えた。

「そうですよ。
 が、そろそろ帰る頃なんじゃあないですかね?
 あ、でも・・・
 他の男と一緒に居るのかも知れないですね。」
ふふふ、と、意地悪く笑うフーゴ。

・・・なんか分かったぞ。

「てめー、フーゴッッ!!!
 オレをからかってんだなッッ!
 オレの方が年上だかんな、忘れンなよッッ!!!」
顔を上げ、テーブルをドンドンと叩きながら抗議した。

は、オレと・・その・・・付き合ってんだッッ!!!
 だから!他の男となんか居やしねーぜ!!!」

オレの剣幕を、むしろ喜ぶかのように、にやりと笑うフーゴ。
くそう、絶対面白がってやがる!

「ふぅん。
 じゃあですね、学校へ行ってみてはどうですか?
 の迎えに。」

「ああ、行ってやるよ!!
 見てろよ、はぜってー他の男となんか居やしねー!
 すぐ、オレと一緒に帰ってくるんだかンな!!」

オレは乱暴に立ち上がると、
書きかけのノートやテキストもそのままに、
店を飛び出した。


ああ、なんか・・・
フーゴに上手くしてやられた、って感じ、する・・・。

でも、いっか!
いっぺん、の学校ってのも、見てみたいしな!


オレたちの馴染みの店から、の通う学校はそう遠くない。
走って来たから、すぐに着いた。
校門をくぐると、生徒がたくさん居る。
オレは、満足に学校へ行ってないから、なんかすげー新鮮!

無断で校舎へと入り、確かは1年生だったっけ、と、
『1年』と書かれた札のある教室の方へと足を向けた。

1つずつ教室を見ていくと、残っている生徒達がオレの方を見て不審そうな顔をした。
オレは構わず、次の教室、次の教室と見ていく。
すると、先の方から、の声が聞こえた。

オレは足早に、声のする教室へ向かった。
ひょい、と覗くと、と、数人の男女が、楽しげにしゃべってる。

あぁ、の学校での姿ってーのは、こーゆー感じなんだな、と、
しみじみ思うと同時に、
学校へ行っていないオレから、すげー遠く離れた存在に思えて、
なんだか哀しくなった。
オレも学校へ行けば、あーゆー風に、一緒に過ごせたりすんのかな。
なんて、バカみてーな事、考えてみる。
ありえねえ、そんなの。


オレはちょっと不機嫌な気分のまま、その場に立ち尽くした。

オレの存在に気付かず、
やその友達は、話を続けている。
オレだけ、別世界にいるみてーだ。


の彼氏って、カッコイイよね!」
「そうそう!こないだ、パーティーで偶然会ったんだよね!ねぇ、!」
女友達が、そう口々に切り出した。
言われたは、照れながら笑ってる。

「あー、俺も見たぜ。
 でもさ、アイツ、組織【パッショーネ】の人間だろ?
 そんなヤツと付き合うなんて、、どうかしてるぜ。」
「え、その噂、マジだったんだ?!
 、そんなヤツ止めて、俺と付き合えよ。
 俺、お前のこと好きなんだぜ。」
男友達も、無遠慮にそう話す。
付き合え、つったヤローが、の肩に手をかけた。
は、困った顔をして、その手を払いのけようとしてるが、
男はしつこくからんできやがる。

クソッ!!
マジムカつくぜ!!!!

オレはもう我慢ならず、ずかずかと教室へ入った。
「オイッッ!!!
 その汚ねー手をどけなッ!ブッ殺すぞ、てめええーーッッ!!」

「な、ナランチャ?!」

オレの突然の登場と、
オレの剣幕に、
どいつもこいつもビビッた顔をしてたじろいた。
の肩に手をかけてたヤローも、慌てて手を引っ込め、オレから顔を背けた。

オレはに近付くと、ぐいッ!と肩を抱いた。
に手え出そーなんて考えンなよ、てめーら。
 さっきみてーに、指一本でも触れてみろ!
 マジでブッ殺すからな!!よく覚えとけ!」
噛み付くように男達にそう怒鳴ると、
の肩を抱いたまま、教室を出た。

も驚いてたみてーだが、
女友達に目配せして、そのまま大人しくオレに抱かれて付いて来た。


校門を出たところで、オレは改めての顔をのぞきこんだ。
勝手なことしちまったから、怒ってねーかな、なんて、ちょっと不安になって。

でも、は怒ってねーみてーだった。
それどころか、オレがを見つめると、
もオレを見つめ、微笑んできた。

「迎えに来てくれたんですか?ナランチャ。」

「・・ん、まあ・・な・・・」

「ありがとうございます。
 それと・・・
 さっきは、すみませんでした・・・
 私が、しっかりしてないから・・・
 ナランチャが来てくれてなかったら、私・・・」
少し顔を曇らせて、謝ってきた。

「いや。オレこそごめん。
 なんか、勝手に教室入っちまったしさ。
 クラスメイトにひでー事言っちまったし・・・
 の立場、悪くなんねーか?」

「そんなことありません!全然大丈夫です!
 ナランチャが助けてくれて、本当に嬉しかったです!
 さっきのナランチャ・・・とてもカッコ良かったです・・・」
頬を染める
そーゆー風に言われると、すげー照れるけど、すっげー嬉しいッ!!

実際、みてーな真面目な生徒が、
オレみてーなギャングのはしくれと付き合ってる、なんてーのは、
世間的には良くねーんだろーけどな。
もそれで良い、って言ってくれてるし、
オレもそれで良い、って思ってる。
オレたちが好き合ってるってゆーのが重要なんだ。


「あの、さ。。」

「?なんですか?」

「それ、やめよーぜ。
 もっとさ、さっきの友達なんかとしゃべるみてーに、
 フツーにしゃべれよ。」

「・・・でも・・ナランチャは年上なので・・・」
は少し困った顔をした。

「そりゃあ年上だけどさ。
 いっこしか変わんねーし、
 それに、オレは彼氏なんだぜ?
 もっと親しくしゃべって欲しーぜ。」
オレは、ともっと親しくなりたかった。
あの、クラスメイトよりも、ずっとずっと。

「・・・分かりました。
 ・・じゃ、なくって・・・
 うん、分かったよ、ナランチャ。」
柔らかく微笑んで、がオレの手を握った。

フランクに話して貰えるって、それだけでなんかしあわせだ!
オレは満足げに笑うと、も笑った。


オレたちは、いつもの店へと足を向けた。

「ナランチャ、宿題は終わってる?」

「・・・あ、・・・やべ・・・」
宿題の途中で、飛び出して来ちまったんだった・・・

「ナランチャ!
 もう。じゃあ、今度の宿題は増やしとくから!」
ぷー、っと頬を膨らませて怒る

「ち、違うんだ!フーゴのやろーが・・・」

「だーめ!」

「え〜〜〜」

猫みたいにじゃれあいながら、
皆が居る店へと向かった。
なんだか、前よりも、もっとと仲良くなれたみてーだ。



TO BE CONTINUED


☆☆☆

やっぱ敬語じゃあなく、普通におしゃべりしたいよね。

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