4ちょっとした好奇心


ピンポーン


でっかい家のインターフォンをが押した。
表札には、『岸辺』って書いてある。

ここが、有名(らしい)キシベロハンってゆー漫画家先生の家、らしい。
売れっ子漫画家先生らしくって、だから家もデカイのかな。

「なんだ?!新聞なら間に合ってるぞ!」
ブツブツ文句を言いながら、男が玄関を開けた。
これが、ロハン先生かあ。

「お!なんだ、ちゃんじゃあないか。
 久し振りだね、イタリアから帰って来たのかい?」
を見ると、態度が変わって、少し表情が柔らかくなった。

「こんにちは、露伴先生。
 夏休みで、帰省してるんです。
 今日はちょっとご挨拶に・・・」
はぺこりとおじぎをすると、今度はオレの腕を引いて、

「彼、ナランチャって言います。
 私の恋人で、一緒に日本に来てくれたんです。」
と、ロハン先生に紹介してくれたようだ。


「ふーん。
 どうぞ?あがってくだろ?」
ロハン先生は玄関を大きく開けて、オレ達を招き入れた。

部屋には、本物の原稿がいっぱい飾ってあって、
ほんとに漫画家先生なんだ!って雰囲気!
オレは興奮して、うわーうわー!と声を上げながら一枚一枚見ていった。

「・・・君は、漫画が好きなのかい?」
ロハン先生が、突然、イタリア語で話してきた。

「はい!『北斗の拳』とかすげー好きなんです!」
そう答えると、ロハン先生は、また、ふーん、と、無関心そうに目線を逸らした。

・・・なんか、この町って、変なヤツばっかりじゃあねーか??

オレの不満そうな顔を見て悟ったのか、
「気にしないで。
 露伴先生、奇人って言われてるの・・・」
と、がこっそり教えてくれた。


テーブルに、紅茶が並んだ。

「それで・・・?」
ロハン先生が、高飛車な態度で訊いてきた。

「あの、承太郎さんの写真とか、露伴先生持ってますか?
 ナランチャが見てみたい、って。」
が答えると、オレの方を見て、ふうん、と言った。

「あるよ。なんなら、ジョースターさんのもあるけど?」
ロハン先生はそう言いながら、棚のアルバムを引っ張り出して、
テーブルに広げた。

「ほら、これが承太郎さんだ。
 そして、こっちがジョースターさん。」
ロハン先生が指差した先に、
の憧れるジョータローが映っていた。

確かに、顔もイイし、背も高いみてーだ。
悔しいけど。

ジョースターってのは、確か、ジョセフってぇ人のことだな。
写真を見る限りでは、ただのじじいみてーだけど。
これがトモコさんの恋人(?)かあ。

オレとは、黙々とアルバムを見つめた。

「・・・ところでさ・・・」
ロハン先生の言葉に、オレとは顔を上げた。

「君たち、なんで承太郎さんの写真を?」

一気に、の顔が赤くなる。
それを見てちょっと不愉快になるオレ。

「あ、あ〜〜ッ、言わなくていいよ。」
そう言うと、ロハン先生が、目の前で何かを描く仕草をした。

「ヘブンズ・ドアー!」
小さな漫画のキャラクターみてーなのが飛び出して来て、
の皮膚が・・本みたいにめくれていく!

「な・なにいいぃぃぃーーーッッッ!!!
 ロ、ロハン先生も、スタンド使いだとおおぉぉぉーー??!!!」
オレも慌てて、エアロの離陸体勢を取る。

「エアロスミスッッッ!!!!」

エアロを発動させると、ロハン先生はちょっと驚いたみてーだったが、
オレが銃撃するより早く、ロハン先生のスタンドがオレを本に変えちまったッ!!

「う・・うわああああぁぁぁぁ!!!」
みっともなく悲鳴をあげるオレ。

「驚いたな・・・君もスタンド使いだったのか・・・
 どれ・・・
 まずは・・・『岸辺露伴を攻撃出来ない』、っと。」
そう言うと、ロハン先生はオレに何かを書き込んだ。
そして、続きを読む。

「ふむ。本名、ナランチャ・ギルガ。
 1983年5月20日生まれ17歳。AB型。身長164cm。
 意外とちっこいな。イタリア人なのに。
 好きなテレビアニメ『北斗の拳』。
 ふーん。ぼくの漫画は読んだこと無いのかな・・・
 好きな音楽『トゥーパック』『スヌープ・ドギー・ドッグ』。
 好きな食べ物、ピッツァ(マルガリータとキノコをトッピングしたもの)、
 オレンジジュース。
 嫌いなもの、辛い食べ物、液体関係の音。
 なんだこの液体関係の音って?
 ヒーロー、ブローノ・ブチャラティ。
 ブチャラティ?聞いたことないな。友達か??
 組織【パッショーネ】の一員。
 ふーん。ギャングってやつか。本物か。
 これは漫画のネタに使えそうだな。

 スタンドの名前はエアロスミス。戦闘機型か。
 射程距離は数十メートル。
 ほお、二酸化炭素で探知することも出来るのか、凄いな。
 これも漫画のネタに使えそうだぞ。
 お!君は・・頭が悪いのだな。」

すっげームカつく!!
頭悪りぃって言われたのもそーだし、
勝手に人のこと読みやがってッッ!!!

オレは、震える体を無理矢理動かし、ロハン先生めがけて蹴りを入れた。
が、かわされることもなく、オレの脚はロハン先生の横へと勝手に動く。
その反動で、よろめいたオレは、床に倒れてしまった。
これが・・・『ロハン先生を攻撃出来ない』ってえことかッ。

「くそおおお、戻せよッッこのやろーー!!」

「まあそう急ぐな。
 次は、ちゃんだ。
 君も知りたいだろう?
 ちゃんが承太郎さんをどう思ってるのか。
 あの反応は尋常じゃあない。」
ロハン先生は、にやり、と笑った。

そ・・それは、オレだって気になる。
だけど!
は、憧れの人だ、って言ってたし、
勝手に人の心を覗くのは良くないッッ!!

「や、やめろよっ!!
 勝手に人の心を見るのは良くないぜッッ!!」
オレが怒鳴ると、

「おや、君は、ギャングなのに意外とまっとうなことを言うんだね?」
くすり、と笑って、それでものページをめくった。

「ほら、ここに書いてあるぞ。
 なになに。
 仗助君から紹介された承太郎さんがあまりにカッコよくて、
 一目で好きになってしまった。
 でも、歳も離れてるし、仗助君の親戚だから、
 これ以上好きになるのはやめておこう。
 そして、誰にも言わないでおこう。
 ・・・か。
 ははは。バカだなあ、ちゃんは。
 誰が見ても、承太郎さんを好きだ、ってバレバレだぜ。」
愉快そうに笑うロハン先生。

は、恥ずかしさのあまり、顔を真っ赤にして、
目に涙を浮かべていた。

オレは、無力な自分が情けなくて、床を思い切り殴り続けた。
「くそっ、くそおっっ・・・」
嫉妬もあるし、情けない、てのもあって、涙が出そうだ。

「・・・おやっ?!
 これは・・・」
ロハン先生が意外そうな顔をして、の本を見つめた。

「ほら、喜べよ、ナランチャ君。
 ちゃんはね、本当に君のことが、誰よりも大好きだそうだよ。
 愛してる、って書いてある。
 なんだ、承太郎さんを好きなんじゃあなかったのか。」
ロハン先生が、本のと本のオレを交互に見た。
そして、また、にやり、と、何かを企んでるような顔で笑った。

「そうだ。
 どれだけ君たちが好き合ってるか、見せて貰おうか。
 ぼくはね、恋愛漫画とゆーものはまだあんまり描いたことないんだけど、
 それの参考にさせて貰おう。」

そう言うと、ロハン先生は、オレにしたみてーに、
に何かを書き込んだ。

「てめーッ!!
 に何、しやがった!!!」

「ん?
 ・・・『今から24時間、はイタリア語を理解出来ない』・・・」

「ッッ!!!」

驚いたオレと、は、本の状態からようやく元に戻った。
オレは急いでに駆け寄ると、
「だ、大丈夫か?!」
と、肩を抱き寄せ、手をギュッ!と握った。

すると・・・
「    」
が、日本語で何かを言ってる。

・・・なに、言ってるのか、分からねえ・・・

ッッ!!」
オレが叫ぶと、
「・・・ナランチャッ・・・」
が、オレの名を呼ぶのだけは分かった。
お互い、名前を呼んでる、ってことだけは、分かるみてーだ・・・

「くそお、なんでこんなことするんだッッ」
ロハン先生を睨みつけると、

「まあ、そう怒るなよ。
 ちょっとした好奇心さ。
 言葉が通じなくっても、恋人は愛し合えるのか?ってね。
 明日のこの時間にまたおいでよ。
 君たちの愛の証明を是非、見せてくれよな。」
ロハン先生は、また、ふふん、と、余裕そうな笑みを浮かべた。

オレは、昨日のジョースケといい、今日のロハン先生といい、
オレとの恋の邪魔ばっかされて、さすがにキレた。

「あぁ!!
 やってやろーじゃあねーか!!
 ぜってー、オレとは、
 言葉なんて通じなくったってよおおォォ!
 愛し合えるってショーメーしてやるよッッロハンせんせーッッ!!」

「ふうん。
 でも、難しいんじゃあないかな〜。
 だって君、頭悪いんだろ?」

「こ・・のやろおお!!!」
攻撃出来ないと分かっていても、つい、エアロで銃撃した。

「ボラボラボラボラボラボラボラボラ
 ボラーレ・ヴィーアっっ!!!」

銃弾がロハン先生を取り囲み、硝煙が立つ。

「やったか?!」

それでも、煙の中から、無傷のロハン先生が悠然と現れた。

「くそっ」

「・・・ほらね、やっぱり君は頭が悪いんだ。
 言っただろ?
 ぼくに攻撃出来ない、って。
 ほら、こんな無駄なことやめてさ。
 さっさと帰りなよ。
 写真も見たんだし、もういいだろう?」

オレらはロハン先生宅の玄関から締め出されてしまった。


「・・・ナランチャ・・・」
不安そうな顔で、がオレを見る。
・・ここで、を不安にさせちゃあダメだ。

、大丈夫だって!
 言葉なんて通じなくったって、なんとかなるよ!」
オレは明るい笑顔で、の肩をぎゅっと抱いた。

は、言葉は分からないだろうけど、
こくり、と頷いた。

ん!なんか、こう、心が通じてるみてーだぜ!
悪くないッ!!


オレらは、不安な気持ちを押し込め、
にっこりと笑い合い、抱き合った。


でも、正直・・・
これから24時間、どーなんのかな・・・



TO BE CONTINUED


☆☆☆

実際、露伴ちゃんはイタリア語しゃべれないらしいのだけど(^^;
まあほら。捏造ってことで。
どうしても露伴ちゃんには出てきて貰いたかったのです。
(4部では、承太郎の次に露伴ちゃんが好き。)

↓宜しければ感想などどうぞ♪


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