遠く


「おい」
後ろから呼び止められ振り向くと、ブッチョーヅラの大倶利伽羅さんが居た。
強引に手を引かれ彼の部屋へ入る。握られた手は痛くは無いが、力強かった。
障子をパタリと閉めると、不意に後ろから抱き締められた。
「?!」
一瞬、体が強張ったが、大倶利伽羅さんの腕が優しく強まり、ふわりと力が抜けた。
大倶利伽羅さんの腕の中はとても気持ちが良い。
そう伝えると、「・・・そうか・・・」一言だけ返ってきた。
もぞもぞと動いて一旦大倶利伽羅さんの腕から抜ける。
「・・・・・」
少し不満そうな、哀しそうな目。
私は急いで大倶利伽羅さんに正面から抱き付いた。
「私も・・・」
「?」
「私も大倶利伽羅さんを抱き締めたいのです」
そう言うと、大倶利伽羅さんの鼓動が早まった。大倶利伽羅さんの胸に当てた耳に響く。
大倶利伽羅さんの腕が私の背中に回り、さっきより強い力で抱き締められた。
「・・・あんまり遠くに行くな」
「・・・え?」
遠くに行った覚えはないので、きょとんと大倶利伽羅さんを見上げる。
「・・・その・・・
 他の奴らと楽しそうにはしゃいでいるのを見かけた。
 ・・・遠くに行ってしまいそうで・・・」
きまり悪そうに呟く大倶利伽羅さんを私はいっそう愛しく想った。
「大丈夫ですよ、私は大倶利伽羅さんのものですから。
 遠くへなんか行きません」
ふふっと笑いながら応えると、
「・・・がオレのもの、ではなくて、オレがのもの、だろ?
 刀剣なのだから・・・」
「いいえ、大倶利伽羅さんの所有なのです、私」
キッパリそう宣言すると、「そうか」大倶利伽羅さんは嬉しそうに、少しだけ笑った。



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