永遠


もう寝ようかと布団を敷いていたら、ガラリと障子が開いた。
大倶利伽羅さんだ。
「・・・寝るのか?」
「あ、いえ・・・」
「・・・少し、付き合え」
私は頷いて、大倶利伽羅さんの後について行った。
行き先は大倶利伽羅さんの部屋ではなく、外だった。
意外だったので、
「あの・・・大倶利伽羅さん、何処へ?」
「いいから」
大倶利伽羅さんの手が私の手を握る。
彼の手からぬくもりが伝わる。
「すまん、冷えたか」
冷えた体を気遣って、大倶利伽羅さんは自分の上着を脱ぐと、私に羽織らせた。
「でも、大倶利伽羅さんが・・・」
「いい、構うな」
ぷいとそっぽを向く大倶利伽羅さんの耳が赤く染まっている。私は密かに微笑んだ。
私たちは手を繋いだまま歩き出した。
着いた先は、桜が沢山咲いている川沿いの土手。
闇を染める桜の花びらと、菜の花の絨毯。空には綺麗な下弦の月。
「綺麗、凄く・・・」
「あぁ。、お前とどうしても見たかった」
大倶利伽羅さんを見上げると、彼は柔らかく微笑んだ。
「昼間はアイツらが騒がしいしな。それに・・・・」
一旦、言葉を切る。
「・・・それに、オレがいつまで生きてられるか分からねぇ、人間の姿でいられるのもいつまでか分からねぇ・・・」
低く呟く大倶利伽羅さん。
胸が苦しいのは、きっと、私も彼も一緒。
「大倶利伽羅さん」
耐え切れず、彼を抱き締めた。
「ずっと一緒です、ずっと」
「ああ」
大倶利伽羅さんも私をぎゅっと抱き締めてくれる。
このぬくもりが永遠ならいいのに。



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