記憶


私は。大学4年生。
B.A.B.E.Lへの就職が内定してる。
なので、同じく、他企業に内定の決まっているお友達と安心して楽しくショッピング。

友達とのおしゃべりに夢中になっていた私は、歩道で、男性にぶつかってしまった。

「「す、すみません!!」」

お互いに謝り、すれ違った。
のは、まぁ、いいんだけど・・・・・

透視(み)えてしまった・・・

あの人と、私が、仲睦まじく笑い合っているところを。

私の能力は、予知能力。
自分の未来は予知出来ないのだけれど、他の人・事柄に関しては、殆どのことを予知出来る。
なので、B.A.B.E.Lへの就職が内定しているのだ。

さっきの人の事を想いながら、去って行く後ろ姿を見つめた。
既に、気になり始めている。
一目惚れ、と言ってもいいかもしれない・・・

確か、あの人は・・・B.A.B.E.Lの賢木先生?
説明会の時に見かけたことがある。
女性関係でいい噂は無いけれど、逆に考えれば、安心を求めているのかも・・・なんて、勝手にいいように解釈しちゃって。


私は、友達に頼んで、合コンをセッティングして貰った。
「絶対に、賢木先生を呼んでよ?!絶対だからね?!」
「・・・なんでそこまでご執心?あの人、あんまりいい噂、聞かないよ?」
「いぃの!ね?お願い!!」
「んー、まぁいいけどさ」
友達は不審がりながらも、OKしてくれた。

合コンの日が楽しみーー!


向こうのB.A.B.E.Lの職員さんは、女子大生が相手だから、と、喜んで来てくれたみたい。

「どうしてもお前に来て欲しい、って言ってた子がいるんだってよ、賢木。
 また何かしたんじゃないのか?」
「そう言うなって、皆本。そうじゃない子だっているんだってば。
 つーか、珍しいな、お前がこんな場所に・・?
 まぁいいか。(多分、オレの監視役だな)」

こんな会話が聞こえてきて、頬が赤くなる。
それ、私のことですーー。


ご飯が始まり、軽く自己紹介。それが終わると、それぞれ好きなように席を替わったり食べたり飲んだり。
私は、それとなく、賢木先生の隣りに陣取り、料理をよそってあげたりした。

ちゃん、気が利くなぁ、ありがと!」
にっかり笑う賢木先生を見てると、凄く照れる。

ちゃん、この後、カラオケ行くんだけど、一緒にどう?」

チャンスーー!!!!
絶対行きたい!!!

「い、行きます!」
「?! そ、そっか!いやー、嬉しいぜ!」
一瞬、驚いたようだったけど、(想定外だったのかな?)また、にっかりと笑ってくれた。



賢木Side

『偏愛の輪舞曲』を歌い終わると、ちゃんが輝いた目をして、オレの手を握ってきた。

「す、凄いです、賢木先生!!まるでKISHOWそのものでカッコ良かったです!!」
「あ、ありがと・・・」
ちょっとその目力に負けてしまうオレ。

「ねぇ、訊いてもいいかな?」
「?」
オレ達は、手を握り合ったまま、喋った。

「オレにどうしても来て欲しい、って頼んだ女の子が居る、って聞いたんだ。
 それって、もしかして・・ちゃん?」
「!!」
ボッ、と、顔が赤くなるちゃん。図星だなぁ、コレ。

オレは、思い当たるフシがある為、カマかけてみた。
「なぁ、・・・オレと出会った時のこと、覚えてる?」
たいていの女の子は、これで「冗談でしょ!」と笑うハズ。
だが・・・

ちゃんは、違ってた。

「お、覚えて・・・くれてるんですか?賢木先生?」
オイオイ、これ、まじでか。

「道で、ぶつかっただろ?」
「そ、そうです!私、お友達と、おしゃべりに夢中になってて、それで・・・」
「かーわいぃ!」
そう小さく叫んで、オレは思わず、ちゃんを軽く抱き締めた。
「っ!!」
ビックリしたちゃん。そりゃあそうだろうな・・・
と思ってたら、皆本に剥がされた。

「何やってるんだ、賢木!!
 さん、困ってる・・じゃ・・・・」

皆本の声が途切れる。
見ると、ちゃんに視線がいってる。
オレもちゃんを見ると・・・・
顔は真っ赤にしてるが、嫌そうな雰囲気では無かった。
あまり嬉しくないが、女の子には嫌がられることの多いオレ。こんな反応をしてくれる子は滅多に居ない。
まさかとは思うが・・・・

ちゃん、外、出よっか?」
手を差し伸べると、嫌がりもせず、ただ、ちょっと恥ずかしそうに、こくり、と頷き、そっと手を添えてきた。
可愛くて仕方が無い。

カラオケ屋の外に出ると、少し風が吹いていた。
火照った体に気持ちいい。
ちゃんも同じなのか、
「わー、風が気持ちいいですねー」
と、大きく伸びをする。

「なぁ、ちゃん・・・」
「はい・・」
「オレ、ちゃんのこと、気になるんだ。
 今日が初対面なのに、こんなこと言うの、可笑しいと思われそうだけど・・・・」
「初対面じゃないです!!私、初めて会った時から、賢木先生のこと・・・」
「・・・・う、ウソだろ?
 ありえねぇ、こんな展開・・・
 どっかに、隠しカメラとかあって、からかってるとか、そーゆーアレ??」
「嘘なんかじゃないですってば!
 ・・・透視(よ)んでも、いいですよ?」
繋いでる手に、ぎゅっと、力を入れるちゃん。

・・・マジ、ありえねぇ展開。

「私、透視(み)えたんです。」
「? 何を??」
「・・そ、それは・・・言えません」
そう言って、ちゃんは顔を赤くした。

「なぁ、透視えた、って、もしかして、ちゃんも接触感応者?」
「いえ、私は、賢木先生と違って・・予知能力者です」
「あー、それで、B.A.B.E.Lに・・・」
「はい」
「・・・・
 やっぱ気になる。
 何が透視えたんだ?!」
「は、恥ずかしくって、言えませんってば!!」
「予知、ってことは・・・・
 オレの何か、ってことだよな・・・・
 恥ずかしい、ってことは・・・・
 ちゃんとオレが、こんなことしてる、とか?」

そう言いつつ、オレはちゃんの顔をオレの方に向かせ、ゆっくりと近づくと、キスをした。
最初だから、軽く。

唇をはなし、顔を覗き込むと、またしても真っ赤だった。

「こ、コレよりは恥ずかしくないです・・・」

だと。
めちゃくちゃ可愛い。

「あーもう降参!
 ごめん、オレ、ちゃんが好きだ!」
勢いで告白し、勢いで抱き締めた。

「っ!!」
ビックリしたのか、息を飲んだちゃんだったが、弱い力で、オレの腰に手を回した。
これって・・・期待して、いいのか・・・?
今度は、オレの方が息を飲んだ。

「わ、私も・・・
 賢木先生のこと、初めて、ぶつかった時から・・・
 ひ、一目惚れ、でした・・・・」

わーーー!!!!と、叫び出しそうなくらい、嬉しかった。
誰だ、いつも振られてる、とからかってたやつ。
誰だ、今回の件、何かしたんじゃないか、と言ってたやつ。
全部皆本じゃねーか、バカヤロウ。
オレだって、相思相愛になることだってあるんだ!滅多に無いけどな!!

オレは、ちゃんを抱く腕の力を強めた。

「サンキュ、ちゃん。
 すっげー嬉しいぜ」

ほんと?と、顔を上げたちゃんに、すかさず、キスの嵐。
さっきは初めてだったから軽めにしといたが、今度は両想い、って分かったんだ。貪るように、ちゃんの唇を奪った。



それから数日後。(ここから先、ちょっと暗くなります、ご注意☆)

B.A.B.E.Lを一足先に見学したいと言うちゃんを案内していたオレ。

「あっれー?珍しいね、賢木先生が女連れなんてさー」
と、後ろから、薫ちゃんが失礼な事を言ってきた。
「ふふん、女連れ、は正確じゃあねぇな。彼女だ」

「「「えーーーっっ?!!」」」
「ま、まじでか」
「ウソちゃう?」
「うぅん、ウソじゃないみたいよ!」
ちゃっかり、オレの腕に指をくっつけ、透視(よ)んでる紫穂ちゃん。
ほんとに信用ねーな、オレ。

「やめといた方がええで?」
「そうよ、下半身はいい加減な男だから」
「そーだそーだ!」
なんて失礼な。

「・・・大丈夫です。
 私、賢木先生のこと、信じてますから」
ぺかーーー、と、後光が差しそうなくらい、眩しい笑顔に、オレも、3人も、目を閉じてしまいたかった。
そんなに信頼されたこと、ねぇかも。
ちゃんに、感謝。

「どーだ、自慢の彼女だぜ?」
「信じられねぇ、私の彼女にしたいくらい美人だし!」
「オイオイ」
すると、ちゃんが、ぎゅっ、と、オレにしがみついてきた。
「ん?どうした?」
「・・・うぅん、なんでもないです・・」
だが、明らかにオカシイ。
ちょっとだが、恐怖心に駆られてるような・・・

「診察室、行くか?」
こくり、と頷くちゃん。
「わー、やらしぃことするつもりや!不潔ーー!!」
「別にそれはそれでいーだろ、恋人なんだから!つーか、マジで診るっての!!」

オレらは、3人を後に、オレの診察室へと向かった。


「・・・で、どうした?」
「・・・く、口で説明するより・・・
 透視(み)て貰った方がいいかもしれません・・・」
オレは、恋人を透視るのは、気が引けてたから、一度も透視たことは無かった。
だが、ちゃんがそう言うのなら・・・言葉より、ビジョンの方が伝わり易いと思ったのかも知れねぇしな。

そっ、と、壊れ物を扱うように、優しく、ちゃんに触れた。
途端。
見たくない光景を目の当たりにした。

それは、薫ちゃんが女王となって、能力者の暴動を煽っているビジョンだった。

オレは慌てて、ちゃんに当ててた手を放した。冷や汗が出る。

ちゃん、コレ・・・」
「・・・ちょっと怖かったですけど・・・もう、大丈夫です。
 それと・・・極秘、ですよね?」
賢いちゃんに頭が上がらなかった。

ちゃん・・・」
オレは、ちゃんを抱き締めた。

「大丈夫だ。
 何があっても、オレがちゃんの傍に居るから」
「賢木先生・・・」
抱き締め返してくれるちゃん。


そう遠くない未来。
薫ちゃんが女王になる。

ちゃんには、他に、どんな未来が透視えてるのか・・・
尋ねても、あまり話したがらないちゃん。
・・・未来は、変えられないと言うのか・・?

いいや!
オレとちゃん、それに皆本やあの3人が居れば・・・
何にでもなれるし、どこへだって行ける!
そう、信じていいはずだ、きっと!


☆☆☆

ぐあーーー
賢木先生甘夢のハズが、女王絡みでちょっと最後暗い終わり方になってしまいました、すみません!!

↓宜しければ感想などどうぞ♪


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