盲目


ある日。
エリシュカ様がご学友を連れて来られた。
エリシュカ様より2つ年上の16歳で、先輩にあたるそうだ。
名前は、
エリシュカ様のお気に入りのようで、それから頻繁には招かれた。

自分でも理解している。
これは一目惚れだ、と。

が来られた際は、花束やスィーツを贈るなど、積極的にアピールした。(自分でも信じられない程に。)
始めは戸惑っていただったが、私の意図を知ると、恥ずかしがりながらも受け入れてくれたようだった。
そして、時には、高価な指輪も・・・・

「い、頂けません、こんな高価な・・・っ」

「いいのです、私が差し上げたいだけなのですから。
 お気に召さなかったらお捨てになっても構いません、ですから・・・
 どうか、受け取って下さい」

そう言うと、は躊躇いがちに受け取った。
すかさず、私がの指に嵌めた。
私は内心笑みを浮かべた。
手筈は順調だ。
もう少しでが手に入る。


それからは、エリシュカ様に会いに来る、と言うより、私に会いに来る、と言った方が正解だった。
実際、エリシュカ様がいらっしゃらない時でも、屋敷を訪ねて見えるのだから。

ある日の午後。
エリシュカ様も主人のパルネド様もいらっしゃらない屋敷へ、が訪ねて来た。
私は思い切って、想いを打ち明けてみようと思った。

、聞いて貰いたい話があります」

自室のベッドに二人で並んで座り、申し出ると、

「はい、」

首を少し傾げながら私の話を待っている

「気付いているとは思うのですが・・・・
 私は、が好きなのです・・・・」

「・・・・黒白さん・・・・」

は?」

じっ、と瞳をみつめる。
私が写っている。吸い込まれそうだ。

「あの、・・・私、・・私も、黒白さんのことが、好き、です・・・・」

の言葉を聞いて、柄にも無く胸を撫で下ろした。

「ありがとう、。嬉しいですよ、とても」

肩に手をかけ、ゆっくりとくちづける。
焦らず、ゆっくりと。そして、何度も、何度も。
の呼吸が少し乱れる。

「少し、疲れましたか?」

私の問いに、は、ふるふると首を振った。
私は、の肩にかけていた手に力を少しだけ込めて、をベッドに横たわらせた。
何も知らない無垢な
不思議そうな、それでいて艶っぽい顔で私を見つめている。

その日、私はの「初めて」を心ゆくまで堪能した。
まるで、好物のスィーツをゆっくりと味わうかのように。


それから、私達は恋人同士になった。
私自身嬉しかったが、も余程嬉しかったのだろう、屋敷へ訪れる回数が格段に増えた。


「エリシュカちゃんはいいな」

ある時、ふと、溜め息まじりにそう呟いた。

「?」

「だって、黒白さんがお世話役なんでしょ?いつでも一緒に居られて羨ましい・・・」

の想いに気付き、私は、ふっ、と笑った。

「もしかして、やきもち、ですか?
 ちょっと嬉しいですね。
 でも、私はエリシュカ様のお世話係りなだけで、恋人でもなんでもないのですよ?
 むしろ、のほうが長く一緒に居ますし・・・・」

私は意地悪く、わざとゆっくりとに近づき、長めのキスを交わした。

「こうやって触れるのも、キスをするのも、だけなのです」

そう言うと、は満足したのか、照れたような笑顔を作って、私に抱きついた。
しあわせな、ひととき。
だが、そう長くは続かなかった・・・・


それからしばらくして。
輪のやつらと戦う時が来た。
パルネド様からは「全て黒白がやった」と宣告されたようだ。
逃げ場はもうない。
だが、・・・・




新月の真夜中。
一度も来た事は無い、の家、の部屋。
侵入するのはいともたやすかった。

、起きて」

眠っているに、優しく声をかけた。

「ん・・・?
 !!
 黒白さん?!どうしてここに??
 っ、け、怪我、して・・・・っ」

「あぁ、大丈夫だから」

私は怪我を隠すように傷に手をあてた。

「よく聞いて、
 私はこれから一時、身を隠さないといけない、輪、から・・・
 にはお別れを言いに来ました」

一緒に来て、とは言わなかった。
は巻き込みたくはない。

「行く、私、一緒に行きます!
 私、黒白さんと一緒がいいです!」

考える間も無く、は即決し、ベッドから飛び出すと着替え始めた。
私はぽかん、とした。

「逃げるのなら、荷物は少ない方がいいですよね?」

大事なモノだけ小さなカバンひとつに纏めた

、正気ですか?
 あの輪から逃げるのです、命の保障は・・・・」

「黒白さん!
 私、黒白さんと一緒に居たいんです。
 たとえ、黒白さんが輪に追われる様な犯罪者だったとしても、
 たとえ、命が尽きるかもしれなくても・・・」

「・・・・・
 分かりました。
 では、参りましょう。
 愛しています、

私はにキスをひとつ落とし、手を取り、そして、私達は、闇の中へと紛れ去った。




☆☆☆

捏造ばっかりですみません。輪との戦いの後、こんな感じだったらイイナァと思いました。


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