優しすぎる狼1
私、は、今、恋、してます。
あれは、数日前。
ピンポ〜〜ン♪
夕食前。
なんの前触れもなく、嵐はやってきた。
「はいは〜い?」
玄関を開けると、肌の白い、赤毛の美青年が。
「コンバンハ。
ボク、ヴォルグ・ザンギエフと言いマス。
隣りに引っ越して来ましタ。
どうぞヨロシクデス。」
ぺこり、と頭を下げる青年ヴォルグさん。
その手には、「お近づきのしるしに」と、
『音羽ボクシングジム』と書かれた贈与品のタオルが握られていた。
この瞬間、私は恋に落ちました。。。
あれからずっと、私の頭の中はヴォルグさんのことばかり。
何の為に日本に来たのかな?
何歳なのかな?
どんな食べ物が好きなのかな?
私は、ヴォルグさんのことを何にも知らない。
出身国さえも、知らない。
知っているのは、優しそうな笑顔だけ・・・
「ちょっとぉ〜〜久美ぃ、聞いてる〜〜?!」
仲良しの久美とお茶しながら、悩みを聞いて貰う。
けど、オクテの久美は、あんまりアテにならない。
(そもそも、あんな怖い顔のお兄ちゃんがいるからだと思うな!)
「う〜〜ん・・・
は、そのお隣りさんとおしゃべりしたいんだよね?
・・・だったら、何か・・・
そう、お料理作って、『余ったからどうぞ』て持って行けば?」
「わお!
久美にしてはナイスアイディアだわ!」
なにそれ、と文句を言う久美をカフェに残し、
ありがとう、と一言お礼を言って、私は足早に帰路へついた。
ということで、早速、『余ったからどうぞ』作戦、実行します!!!
・・・と、思って、一応、得意料理に入る肉じゃがをタッパーに詰めたはいいものの・・・
お隣りの玄関前で、私はウロウロしていた・・・
インターフォン押して、「余ったからどうぞ」って言うだけだから!!
ただそれだけだから!!!
そう自分に言い聞かせても、なかなかそのインターフォンが押せない・・・
うぅ〜〜すっごい緊張するよおぉぉ〜〜〜
どうすればいいんだろう・・・
・・・インターフォン押せばいいだけなんだけどさ・・・
私がそう、ヴォルグさん家の玄関前でうだうだしていると・・・
「オヤ?
どうかされましたカ?」
背後から、大好きなヴォルグさんの声がした。
どこかからの帰りなのだろう。
少し大きめのバッグを持って、私をじっと見つめている。
もう、ヴォルグさんの顔を見るだけで、頬が熱くなる。
重症だよ、私・・・
「あのっ、ヴォルグさん!!
あ、あのですね・・・
これッッッ!!!」
もう、なんて言ったらいいのか分からず、
ただもう必死でタッパーをヴォルグさんに押し付けた。
「?」
「あのっ、あ、『余ったからどうぞ』!!
つ、作りすぎたのでッッ!!」
不思議そうな顔をしているヴォルグさんに、
頭の片隅にあった、作戦の名前を叫んでみた。
すると、
「ワァ、美味しそうですネ。
どうもアリガトウ。
え・・と・・・」
タッパーを受け取ってくれたヴォルグさんは、
私の顔を見て、名前を思い出そうとしてくれてるみたい。
でも、思い出せるはずがない。
だって私、初めて会った時、舞い上がりすぎて名乗っていないんだもん。
「あ、わ、私、って言います。
、です。」
「ありがとう、。
とても素敵な名前ですネ。」
にっこりと笑い、私の名前を呼んでくれる。
もう、それだけでしあわせいっぱいだ。
「いえっとんでもないです!
そ、それでは!!」
私は、りんごみたいに真っ赤になったであろう自分の顔を隠すように、
急いで自宅の玄関へと逃げ込んだ。
や、やった!!!
一歩前進した!!はず!!!
・・・あれ?
でも・・・
相変わらず、私は、
ヴォルグさんがどこから来たのか、
何しに来たのか、
全然知らない。
・・・緊張せずに、もっとおしゃべりすれば良かったな・・・
ちょっと反省しつつも、
それでも、成功したと思える作戦に、大満足な私でした・・・
☆☆☆
初☆ヴォルグさん夢♪
ヴォルグさんのこれからを考えると切ない夢になりそうですが、なるべく甘くしていきたいです!
↓宜しければ感想などどうぞ♪
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