優しすぎる狼7
空港の屋上で、離陸する飛行機を眺めていた。
あれが、ヴォルグさんの乗った飛行機かしら・・・・
火照った顔に、風が当たって気持ちいい。
何人か、屋上に居るけど・・・
まさか、知り合いに出会うとは思わなかった。
「・・・幕之内さん・・・・」
「あれっ、・・・さん、でしたよね。
あ、ヴォルグさんのお見送り、ですか?」
「・・・はい・・・」
泣き顔を見られたくなくて、俯いた視線の先に、見慣れたグローブ。
「!! それって、・・・もしかして、ヴォルグさんのグローブじゃ・・?」
「あ、はい・・・」
幕之内さんが持っていた、ヴォルグさんのグローブ。
なぜだか、別れを決定的なものにされたようで、またしても私は泣き崩れてしまった。
「? なんだ、一歩?お前、慌てて出て行ったと思ったら、女連れか?」
大きな男の人が、にしし、と笑う。
「ち、違いますよ、鷹村さん!彼女は、ヴォルグさんのお友達で・・・」
「・・・凄い泣き腫らして・・可哀想に・・・」
「そうなんですよ、木村さん。この状態だったから・・このまま帰すのも可哀想で・・・・」
私は、何故か、鴨川ジムに来てしまっていた。
今は、一人で居るよりも、誰かと一緒に居たほうが良かったから、ありがたい・・・
木村さんが濡れタオルを持ってきてくれて、顔を冷やした。
木村さんって、気が利いて、モテるタイプかも。
私は、ぼんやりと、練習をするボクサーを眺めた。
その日から、私は、鴨川ジムに顔を出すことが多くなった。
ボクシングに触れていれば、ヴォルグさんに少しでも近づけると思って。
実際、ヴォルグさんの載ってる雑誌を教えて貰ったり、写真を貰ったりして、かなり優遇して貰ってる。
それに、・・・久美の意中の相手が幕之内さんというのも聞いてビックリ!
お互い両想いなんだから、早くくっついちゃえ!って思うんだけど、オクテな二人だから進展せずやきもき。
でも、それは自分にも当てはまる気がする・・・
だって、ヴォルグさん、私に愛してる、って・・・言ってくれたから・・・
いつかきっと、ヴォルグさんに会いに、ロシアに行きますから。待ってて下さいね・・・・
そして、私は短大を卒業し、社会人になった・・・・
☆☆☆
ずっと変わらずヴォルグさんを好きなヒロインちゃん。大人になってしまいました。
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