月と星と 4
お風呂上がりの歳三は、
冷えた緑茶をすすりながらリラックスしていた。
の用意したメンズサイズの(背面に「鬼の歳三」と描かれた)Tシャツに、
先程まで履いていた軍服のズボン、という、
奇妙な格好である。
ーー・・・どんな格好でも、カッコイイなぁ・・・
と、は魅入っていた。
「あの・・・
そのままの格好じゃ、なんなので・・・
服を買いに行きませんか。」
「・・・服、か・・・」
お洒落な歳三としては、
現在の日本で、イケてる服がどんなものか、見ておきたい気分になった。
「ちッ、メンドくせーな・・・」
と言いつつも、嬉しそうにそそくさと立ち上がる歳三であった。
「あの・・・靴が無いので、コレで・・・」
が差し出したのは、スリッパだった。(キティちゃんのイラストがついている。)
「!!!!
履けるか、こんなもん!!!!!!」
歳三は、自分が履いていた長ブーツをぐいぐいと履きだした。
「す・・すみません・・・」
あまりにもこだわりの強い歳三に恐縮しながら、
は玄関の鍵を掛けた。
外に出ると、目に入る物全てが、
歳三にとっては何もかも新しく、珍しく映るようだった。
ひとつひとつに目を見張り、驚いた表情の歳三。
「オイッあれっ・・・
何か・・飛んでるぞっ?!!」
「あぁ、あれは飛行機です。」
「オイッなんかっ・・・ガタンって、何か出てきたぞッ?!」
「あぁ、あれは自販機です。
飲み物とか煙草とか・・・
お金を入れたら出て来るんです。」
そんなやりとりをあれこれしつつ、
この奇妙な格好をまずどうにかしたい、と、
大きなショッピングモールへと足を向けた。
何でも揃うメンズショップへ入ると、一通り見て回ることに。
そこで歳三の目に入ったのは・・・マネキンである。
「この服、イイな。」
細身のジーンズに、先の尖った革靴、それに、ピタッとした感じのVネックのTシャツ。
「こいつなんかより絶対、俺の方が似合う。」
真顔でそう言い放つ歳三に、店員は少しビビりながら
(どうも格好が変なのも、その驚きの内に入っていたようだ。)
マネキンから服を取り外し、歳三を試着室へと促した。
数分後・・・
試着した歳三が出て来ると・・・
「オオーーッッ」
店内のあちこちから、どよめきが。
は、あまりにも似合い過ぎて、格好良過ぎる歳三に眩暈を覚えながら、
更にこの店内の状況が恥ずかしく、早くここから立ち去りたかった。
「よくお似合いで・・・」
店員が揉み手で寄って来た。
「ん・・コレ、イイな。気に入った。」
「あの、・・土方さん。
一着だけじゃ着替えられないので、
何着か買っておきましょうか・・?」
「なにっ、いいのか?!」
とても嬉しそうな顔で反応する歳三。
「実は、これも気になってたんだよな・・・
あ、あと、コレと・・・」
嬉々として洋服を選ぶ歳三であった。。。
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たいていの物は買い揃え、
少し休もう、ということで入った有名なコーヒーショップ。
果たしてコーヒーなんて土方さんは飲めるのかしら・・・
しまった、和菓子屋さんにすれば良かったワ、と、
今更ながら考えてしまう。
そんなをよそに、注文したフラペチーノを飲んで、
「ん・・んまい!!
こんな旨い物があるのか、この世の中には・・・」
と、歳三は一人、感動していた。
(そんな歳三を振り返り見つつ「超イケメン!!」と囁き合う女性が絶えなかった。)
「あの・・これから、どうします?」
「『これから』・・・」
フラペチーノのストローから唇を外し、
つい、と外の景色に目を移す歳三。
何を考えているのか分からない、
しかし、
美しい横顔とその眼差しに、
はうっとりと見とれることしか出来なかった。
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