すれ違い、勘違い 2





「山崎くん、を呼んで来てくれないか」
副長に言われ、屯所内を捜すと、は庭で洗濯物を干していた。

名を呼ぶと、嬉しそうな顔で振り向いた。
「山崎さん!」
洗濯物を放り、オレの方へ駆け寄ると、「どうかされましたか?」笑顔で首を傾げる仕草が愛らしい。
「すまないが、副長がお呼びだ」
「・・・土方さん、が・・・・」
少し表情が翳った気がしたが、は大人しくオレに従って副長室まで付いて来た。
「副長、入りますよ」
返事を確認し、障子を開けた。
を連れてきました」
「あぁ、山崎くん、ご苦労だった。、入れ」
オレは一礼して副長室を退室した。が、どうしても気になり、副長室のすぐ外で、気配を消して副長の次の言葉を待つ。
中から聞こえてきたのは、自分をどう思うか?と、に問う内容だった。
(・・・やはり、副長はを自分のモノにするおつもりだ。)
オレは眉をひそめ、冷めた目を伏せ、気配は消したまま、足早にその場を去った。
副長が誰と恋仲になろうが問題無いし、が誰の女房になろうがオレには関係無い。
オレは監察方だし、幕府の犬なのだから、恋だの愛だのそんなモノに現を抜かすわけにはいかないのだ。
・・・今、こうやって思い悩んでいるオレ自身にも腹が立つ。
妙に暴れだしたい気分だ。
そのまま道場に向かう。
皆の稽古は終わったのだろう、何人かの剣好きしか居なかった。
「アレ?山崎さん。珍しいですね」
沖田くんがオレを見付け、きょとんとした顔で訊いてきた。
「まァな。任務の合間に稽古しておかねばな」
「良かったら、お相手しますよ」
沖田くんが、手にしている竹刀を握り直した。
彼が相手ならば、手加減せずに済む。
オレは殺気を剥き出しにして竹刀を振るった。
「・・・もう降参です、山崎さん」
大分剣を交えた後、お互い荒い息を吐きながら、竹刀を収めた。
「・・・何か、あったのですか?」
ふと、心配そうに呟く沖田くん。こんな若者に気付かれるとは、オレも甘いな、と自嘲し、
「あぁ、ちょっと、な」
適当に誤魔化しつつ、礼を述べると道場を後にした。
井戸で冷水を頭から被ると、血が昇って火照っていた頭がヒヤリと冷えていく。
これでいいんだ。もう、迷うまい・・・・




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